第2話「セミと青年」

 あるところになにもかもを失敗し、人生に絶望した青年がいた。


 夏のある日、外で鳴いているセミに「七日間だけの命でも精一杯生きられるお前らと代わりたいよ。」と呟いた。


 すると突然青年は気を失い、気がつくとセミになっていた。


 目の前の道には倒れている自分自身がいる。


 やがて倒れていた『自分』は目を開け、起き上がるとこちらをちらと見て、スタスタ歩き出した。


 青年は『自分』がこれからどうなるのか気になり、『自分』について飛んで行った。


 それから『自分』を観察し続けた。


『自分』は青年の失敗をやり直し、更生していき、やがて『自分』は誰が見ても幸福な人間になっていた。


『セミ』は自分が精一杯生きられたのに『生きなかった』という選択をしていたことに気付き、激しく後悔した。


 結局『セミ』は「精一杯鳴く」ということすらせず、静かにポトリと地面に落ち、真夏の熱気に逆らうように冷たくなっていった。

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