結果オーライ?

「ありがとう‼︎あんたら‼︎」


街を囲む壁と出入り口と思われる門、そしてそれを守るセキュリティを木っ端微塵に破壊したシャールとエルダー。(エルダーは何もしていない。シャールの単独犯)


最悪敵と思われ、街の住人達と戦闘になることも仕方ないと覚悟していたエルダーだったが、(シャールだけを突き出そうなんて考えてない。)


そんな二人を囲んだ人々は、なぜか口々にお礼を言い始めた。


「……どうなってる?」


「……知らない、気持ちが悪いから殺す?」


「いやダメでしょ、何言ってるのルーちゃん。」


いまいち状況がつかめず、困惑するエルダーとシャール。


「いや〜本当にありがとう!君達が来てくれなかったら今頃どうなってたかわからなかったよ。」


そんな中、集団をかき分けてやってきた一人の男が、エルダーの手を掴み、握手しながら改めて礼を言いはじめた。


どうやらこの連中の長と思われる、他とはすこし違った雰囲気を持つ男だ。


「俺の名前はチョーだ。そしてみんなはこの街の住人。よろしくな!」


困惑する二人を他所に、男はニコーッと、無邪気な笑みを浮かべて話しかけてきた。


「チョーさんか、で?どういうことだ?俺たちは街の壁を破壊したんだが?なぜ礼を言う?」


いきなり大勢の知らない人に囲まれ、しかもめちゃくちゃ感謝され、どう反応していいか分からないエルダー、


「あの壁は街を守っていたものじゃないのか?」


握手され、その手をブンブン振り回されるのを、なすがままにして、思ったことを口にするエルダー。


「ああ、そうだ。そうだったよ……」


するとチョーは、先ほどまでのテンションはどこへやら、エルダーの手を離し、少し真剣な表情になる。


「そうだった?今は違うのか?」


「ああ、今は違う。ある出来事を境に、街を守る壁は、俺たちを街に閉じ込めるためのものになったんだ。」


「閉じ込める?」


街を守っていた壁が急に街を閉ざす壁になったというのか?


ますますわけがわからなくなるエルダー。


……街の中の住人を外へ出さないための壁?そんなもの何の役に立つんだ?


そしてある出来事とは何なのか、


街の中の人間を閉じ込める必要が出てくる出来事とは、


「つまりは街の中で何かしら問題が起きたと言うことか。」


外敵を中へ入れないための壁というならまだ分かるが、その逆となると、


「……まさか、罪人か?」


この街には罪人の収容所的な場所があって、そこから何かヤバイやつが脱走したとか?だがそうなると、ウルフの探し人である、赤ずきんの猟奇的な人物像だったり……とか考えてしまう。


「まさか‼︎そんな程度なら、人間にでもなんとかなるよ」


パッと腕を広げアピールしてくるチョー。


「まぁ……たしかに……」


今エルダーの目に映っているのは、普通の斧や鍬を持った、普通の農民にしか見えない人々、罪人には見えない。


だが、それでも数で押せばなんとかなる……と思う。


「だったらなんで閉じ込められてるんだ?」


罪人でないなら、わざわざ街を壁で囲ってまで住人を閉じ込める理由が分からない。


「それは、あれだよ。」


あまり触れたくないものにでも触れるような、渋い表情をしたチョーが、街の中の方を指差す。


「あれ?」


チョーが指した先を見たエルダーは、


「……なんだ、これ……」


言葉を失う。


「あれのせいでこの街は隔離されたんだ。」


そこには、もう街と呼べるものは無く。


ただ、ちょうど街の中心から広がっている大穴が一つ、底が見えなく真っ暗な闇を作りながら広がっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る