いきなりですが、

エルダー達がいた世界には、女神率いる天使と、魔王率いる悪魔という、まるでこの世の正義と悪をそのまま表したかのような、対立する種族がいた。


天使は、とても美しい姿をしていて、人間達に救いをもたらすその姿から、神の使いとして敬われていた。


対する悪魔はとても醜い姿をしていて、人間を襲うことを生きがいとしている危険な種族として知られていた。


どちらの種族も、それぞれ人間にはない不思議な現象を起こす力を持っていて、人々は、それぞれの種族が持つ力を、聖力と魔力と呼んで恐れていた。


どちらの力も、何かを操るという性質は似たようなものではあるが、持つ種族によって操れるものが微妙に違い、


たとえば天使なら、炎や風など、実態のないもの、悪魔なら、土や植物など、実態のあるものを、それぞれ個体ごとに能力として持っていた。


聖力や魔力は、発動すると、翼という形で視覚化され、能力は、その翼を通して発現された。


個体によって、違った能力を持つ天使と悪魔だが、それぞれの種族ごとに、共通する効果もあり、聖力を持つ天使なら、翼を出すと、光を操ることができるようになり、その光を身に纏うことによって、体の耐久力を上げ、普通ならダメージを受けるような攻撃でも、無傷でいられたりした。


魔力を持つ悪魔なら、翼を出すと、闇を操ることができるようになり、その闇を纏うことで、体を自在に変化させることができ、たとえダメージによって、体が傷ついても、魔力によって瞬時に修復することができた。


そんな力を持つことから、天使は、不変の象徴、悪魔は、不死の象徴として、全ての生き物の上位種として存在していた。


そしてこの二つの種族には、それぞれ目的があった。


悪魔は、破壊と混沌を望み、自分達が住みやすい世界を作るため、邪魔な存在である人間や、その他の種族、天使をも、その魔力を使って排除しようと、暴れまわっていた。


また、悪魔達はペット感覚で魔物という異形の生物を数多く使役していて、勢力は種族中で最大であった。


天使は、平和と調律を望み、全てを壊そうとする悪魔から、全ての種族を守ろうと、聖力を使って悪魔や魔物と戦っていた。


数こそ少ない種族であったが、個々の持つ力は強く、天使一体と悪魔三体で丁度互角の強さとされていた。


ただ、何も考えず暴れまわれる悪魔に対して、全てを守りながら戦うというのは厳しく、天使側は、次第に劣勢となっていった。


そんな時、天使は、自分達と同じく悪魔に抵抗し戦っていた人間に、共通の敵を持つ者同士、手を組もうと、提案した。


当時、悪魔によってかなり追い詰められていた人間は、悪魔という脅威から生き残るためには、天使の提案に賛成するしか選択肢はなく、それを受け入れ、天使と手を組んだ。


天使は、自分達の持つ聖力を、一部の人間に渡した。


受け取った人間は、急激に力を付け、その力を使って、悪魔を次々と倒していった。


さらに、守るものが少なくなった天使達は、悪魔との戦いに集中できるようになり、天使と人間からの挟み撃ちとなった悪魔は後退、勢力を弱めていく。


力を受け取り、聖力を持って天使達と背中を預けあい戦った人間は、聖者と呼ばれ、英雄扱いされた。


天使から力を受け取った人々は、聖力を持ったわけだが、力を使っても翼は生えない。


代わりに、力を発動すると、体のどこかに紋章が発現し、能力は、その魔法陣から生まれた。


天使から力を受け取ったことで、聖者となり、悪魔との戦いを終わらせるため戦っていた人間だが、持つことができる聖力には上限があり、その上限は、受け取る人間によって違っていた。


少なからずいた聖者達の中でも中心となったのが、エルダーやシャールといった、勇者と言われる、他の聖力を持つ人間達とは比べ物にならないくらい大きな力を持った存在。


勇者達は、各々が大きな力を持っていたこともあったが、さらに、天使達からもう一つ、聖力が宿っているという、特別な装備を受け取っていた。


その装備がまた強力で、それぞれ一人一つ持つそれは、形はそれぞれの適正に合わせて変化し、エルダーなら剣、シャールなら弓、その他にも、槍、盾、杖といった、どれも武器の形をしているものばかりだった。


それらの装備は、それ自体にも強力な聖力を宿していて、聖力を持った装備は、聖剣、聖弓などと呼ばれ、特別な物とされていた。


そしてそれらを持った人間の力と合わさることによって、力の元手である天使達より大きな力を発揮したりもした。


この勇者の登場により、天使側が有利となり、あと少しで魔王にたどり着けるといった時に、勇者の前に厄災が発生、世界そのものがが終わってしまったわけだが……


……ところでなんで今、この話をしたかというと、


……次の話に繋がるからである。


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