やっぱり大丈夫だった‼︎

「エー君……なのか?」


少女の、信じられないものを見た時のような声が、エルダーに向けられる。


「ルーちゃん?ルーちゃんなの?」


エルダーも、目の前の少女からの予想外の愛称呼びに、思わず少女に聞き返してしまう。


「知り合いなのかい?」


二人の会話を聞いて、エルダーが目の前の少女と知り合いらしい事を悟ったウルフが、エルダーに聞いてくる。


「ああ、あれが何かの間違いじゃなければそうだ。彼女は……さっき言っていた以前共に旅をしていた仲間だ。」


さっきまでは度重なる絶望で、相手の顔を見ていなかったが、今しっかりとその少女の顔を見て確信した。


……間違いない、彼女は自分の仲間のシャールだ。



「あんた人間と旅をしていたのかい?……同胞の私達を怖がったことといい、話も聞かずに逃げ出したことといい、変わったヤツだね」


不思議なものでもみるかのように言うウルフ。


「……まぁ、人間と仲のいい悪魔もいるって話を聞いたことあるし、ありえないことでもないか……」


どうやら一人で納得したようだ。


そしてエルダーは、


「そう言うことだ。」


もはやウルフの同胞発言にすらつっこまず、もう会えないと思っていた仲間との再会に、胸がいっぱいな様子で少女を見つめている。


「ならちょうどいい、あんたがあの冒険者と知り合いであることを見込んで頼みがある。」


今の会話で希望を得たのか、少し弾んだ声音でエルダーに頼みごとがあると言ってくる。


「……何だ?」


「……少し耳を貸してくれないか?」



ウルフとエルダーが話をしている間に、少女もまた、死んだと思っていたかつての仲間が生きていたことに、驚きと喜びが混在した複雑な表情になり、今にも打ち出しそうだった弓を下げている。



「エー君が、生きていた‼︎」


どうやら喜びが勝ったらしく、持っていた弓と矢すら放り出してエルダーの方へ駆け寄ってくる。


……が、


「いや、まて……エー君は確かに私の目の前でヤツに殺されたんだ!なのにいまこんな所にいるわけがない‼︎」



止まり、臨戦体制に入る。


今度は近接戦闘をする気らしく、背中の剣を抜いて構えている。


「それに相手は悪魔‼︎エー君な訳がない‼︎きっと私の弱みに付け込んで隙を作ろうとしているに違いないんだ‼︎……よくも私の大切な人を使って私を騙そうとしたな‼︎」


エルダーに向けられる殺気はみるみる強まり、今にも爆発しそうだ。


エルダーは、ウルフに耳を貸して、頼みごととやらを聞こうとしていた所だったが、少女から再度放たれる殺気に、思わずウルフから離れて、


「いやそれこそ待てよ‼︎……ってダメだな、もしあれが本当にシャールなら、ああなったらもう止められない。」



こうなったらもう、戦うしかない、と説得を諦め、戦うことにする。



これは、始めてシャールと出会った時の再現のようだ……。


自分とシャールはもう、互いの動きを体が覚えるくらい、互いの技を見てきた。


たとえ、今彼女の目から見た自分が悪魔に見えていても、剣さえ交えれば、自分がかつての仲間であると分かってくれる。



そう信じて、今一度、シャールと戦う覚悟を決めたエルダー。



「よし‼︎いくぞ‼︎ルーちゃん‼︎」



そうシャールに向けて叫び、剣を抜こうと腰に手をやるエルダー、


……だったが、


「あれ〜?」


腰に剣がない。


あれ?どうしよう、


エルダーが持っていた聖剣は、どうやら厄災との戦いで身体と共に失われたようだ。



その上、ついさっきまで、精神のみの状態で、武器など一切装備していなかった女神の身体でこの世界へやってきたわけだから、剣など当然持っているわけないのだが、


なぜか自分の腰に剣が刺さっていると勘違いしていたエルダー、



あれ?ない?なんで?


と、


エルダーが一人であたふたしている間に、


「気安くその名で呼ぶなー‼︎」


鬼の形相で剣を構え、シャールがエルダーに突撃してきた。



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