えっ?なに?超怖いんですけど、
……えっ?なに?今、何かかすった?
森の中をオオカミから逃げるため、ひた走っていたエルダーだったが、どこからか飛んできた何か鋭く尖ったものが、自分の頬をかすめて後方へ飛んでいくのを感じ、さすがに止まってしまう、
すると当然、後ろから迫っていたオオカミに、頭をガブッといかれると思っていたのだが、予想は外れ、オオカミ達も、エルダーの背後で止まるのを感じる。
弓矢か?……ということは、今のはこれ以上近づくなっていう警告か?
「おい!止まれ!そこの化け物共‼︎」
ちょうど矢が飛んできた方向から、若い女性のものと思われる声がする。
……ということは人だ‼︎人がいるんだ‼︎助かった‼︎
「おーい‼︎誰だかは知らないが助けてくれー‼︎オオカミに襲われているんだ‼︎」
叫び、声のした方へ走り出したエルダーだったのだが、
シュバッと、
今度は足元に矢が刺さるのを見て、
……あっ、これはダメなやつだ……
と、確信する。
「なっ……なんで自分に武器を向ける?……どう見ても自分の今の状況は、オオカミの群れに襲われているか弱い人間だろ?」
まだ何かの間違いだった可能性、相手の手が滑ってたまたま後ろのオオカミに向けて放たれた矢が自分の足元に刺さった可能性を捨てきれず、震える声で問う、
「何をふざけたことを言っている?どう見ても貴様はそのオオカミ共を率いている悪魔ではないか‼︎」
率いている?こいつらを?……それに悪魔とはまた失礼なことを、
そちらこそふざけたことをいうな!自分は人間だしこいつらを率いているつもりは全くない‼︎
と、言い返そうと口を開いたのだが、
……妙な違和感に気づいた。
さっきまで、一瞬でも止まれば頭をかじる勢いで自分の後ろを追ってきていたオオカミ達が、もう十数秒間、その場に立ち止まっているエルダーに、一向に噛み付く気配がない、
「……まさか……」
嫌な予想が外れていることを祈って、後ろを振り向いたエルダー、
すると、そこにはパッと見で50を超える、オオカミ達が、自分の後ろに控え、
その内のリーダーと思われる、他のオオカミと比べても、一回り大きいオオカミが、「やれやれ……」といった様子でエルダーを見ていた。
おそらくそのオオカミがウルフなのだろう、
「……どうなっている?」
悪魔?……自分が?
悩むエルダーだったが、一つ思い当たる点があり、みるみる顔が青ざめる。
……まさかあの魔王、自分の身体になんか仕込んだな?
一度は魔王に感謝すらしていたエルダーだったが、魔王に対する評価が一転、やはり魔王は魔王だったと、感謝は静かな怒りに変わる。
「……だから止まって話をしようと言ったのに……」
そしてなんか馬鹿やらかした息子に言い聞かせるお母さんみたいなこと言ってくるウルフ。
「何上から目線で物言ってやがる‼︎敵にそんな可愛そうなもの見る目で見られたら、いくら温厚な自分でも怒るぞ⁉︎」
「敵じゃないと何度も言ってるだろ?私達はあんたにこの先にある危険を教えてやろうとしただけだよ、敵はむしろあっち」
と、ウルフがあごをしゃくらせて、先ほど矢が飛んできた方向を示す。
「…………」
エルダーが、恐る恐る後ろを振り向くと、
……そこには以前の世界で見慣れた、
いわゆる冒険者パーティーと呼ばれる、複数人の人間達が、自分に向けて殺気を放ちながら、剣や弓を構えていた。
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