もうダメかもしれないデス……

「ウォォォォォン‼︎」


「嫌だ怖い来ないで食べないで……」


なんでだ⁉︎……どうしてこうなる?


自分は世界を救いに来た勇者だ……それなのになんで出落ちしかかってんの?





……今、自分達の世界を取り戻し云々……の目的を果たすべく、自分達の世界の後に突然生まれたという、この新しい世界へやって来た、前世界の勇者エルダーは、


……降り立った地がまさかの樹海、一度は詰みかけるも、鉄の精神で立ち上がり”神に祈りながら適当に進む”という手段に出たのだが、


現在、完全に迷子になっていた。


……さらには、




これにだけは絶対会いたくないと思っていた、”オオカミさん”に群れで遭遇、現在絶賛、決死の逃亡中である。




「ウォォォォォォン!」


「あーっ‼︎こら卑怯だぞ!また仲間呼びやがったな⁉︎」


さっきからコイツら遠吠えするごとに数が増えてるんだよな〜……




デス!デス!お前は既に〜デス!デス!選ばれている〜



軽快に鼻歌を歌いながら(心の中で)ひた走るエルダー、




大体なんだこいつら‼︎デカすぎだろ⁉︎



見た感じだと、オオカミの大きさは、エルダーの倍くらいは身長があるように感じる。


オオカミのお口の位置に、ちょうどエルダーの頭がある感じだ。


……ということは、オオカミさんの体調は約3メートル〜……ってことか、笑えねー、



気を抜くと、頭をガブッといかれそうになる。



「ウォォォン!」


「うっさい!黙れ!死ね!」


いくら暴言を吐こうと、エルダーの頭を狙うオオカミ達の数は増える一方なのだが、今のエルダーは、暴言でも何でも、とにかく何か言ってないと今にも泣き出しそうな精神状態なので仕方ない。


「おい……」


終わりのない森の中を走り続けていたエルダーの耳に、どこからか声が聞こえてきた。




ん?なんだ?どこからか声が聞こえてきたぞ?


「……もしかして人間か⁉︎」


近くに人がいるのか?助かった?



「……違う‼︎人間などと間違えてくれるな‼︎私の名はウルフ……同胞よ……なぜ逃げる?」


だが、その声は人間であることを否定してきた。



ウルフ……つまりは今自分を追いかけてきている、このオオカミの群れの内の一匹ということか、


……ってか同胞て、自分はオオカミなどになった覚えはないぞ?


……そういえば、今自分はどんな姿なんだろう、女神の身体に入ってるってことは女神の姿そのままだったりするのだろうか、



だとすると今自分はあの幼女な姿だったりするのだろうか、


今は確認する余裕はない。



「逃げなきゃ食われるからだろ⁉︎あんたらに‼︎貴様何者だ⁉︎なぜ人間の言葉を話せる?言葉で惑わしてくるなど、卑怯だぞ⁉︎」


オオカミが人間の言葉を話せるとは、驚いたが、今はそんなことはどうでもいい、話がわかるならとにかく今はなんとか助けてもらう方法を考えねば、



「……?何を言っている?人間の言葉?私は人間の言葉など話せないし話したくもないぞ‼︎訳の分からぬことを言ってないでそろそろ止まってはくれぬか?」


だが、ウルフを兼ね名乗る者の声は、人間の言葉を話していないと人間の言葉で言ってきた。


もしかして魔王にもらった魔の力のおかげでこの世界の魔のモノ達と意思の疎通ができるようになっていたりするのだろうか、


……まぁ、どうでもいいけど、



「だから止まったら食うだろ⁉︎誰がわざわざ食われるために止まってやるものか‼︎」


さっきから自分の頭狙ってガブガブしてきてるし!



「……食わぬわ‼︎というか食えぬわ‼︎なぜ我々がわざわざ同胞を食わねばならぬ?それにパッと見ただけであんたの力は我々が束になっても勝てないくらい大きい。そんな相手にわざわざ挑むほど、食には困っておらぬ、私はただ話がしたいだけだ。だから止まってくれ!」


えっ⁉︎そうなの?自分、そんな強かったっけ?


……もしかして今自分が入っているこの女神の身体に秘められた力が、そう思わせているのか?それとも魔王にもらった魔の力がこいつらには強そうに見えてるのか?



分からないしウルフがただのハッタリを言っている可能性もある。



「いやだ!」


そんな話、信じられる訳ないだろ‼︎


「どうしたものか……そのまま進むと……」



ウルフが何かを言いかけた時、




シュッ‼︎と、



––––自分の頬をかすめて何かが後方へ飛んでいくのを感じたエルダーであった。

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