そういえば……
「……そういえば、最後に魔王はどうするのか聞いてなかったな、」
まぁ、いいけど……、
おそらくは元天界だった場所に置いてきたと思うが、魔王だし、別にいいよね?
と、気持ちを切り替えて、自分がやらねばならないことに集中することにする。
「オイ‼︎さすがにそれは無くないか⁉︎……仮にも貴様に手を貸してやった良い人だろ?……いや魔王だし、良くも人ですらないけどね‼︎」
なんか自分の中から魔王の声がする。
それだけでも結構気持ち悪いのに、話し方がウザい、
……つまりは最悪だ。
あー、やっぱり付いて来てたか、……自分が女神の身体に入る時、なんか魔王も自分にしがみついて一緒に入った気がしたけど、どれも初めての体験だったせいでそんなもんかと思って流してたわ、
「……で?お前も俺……じゃなくて女神の身体の中で、女神が力を取り戻すのを寝て待つのか?」
「いいや、余はこれからこの身体を出て、この世界で活動するための器を探す。そして肉体を手に入れ、好き勝手させてもらう。貴様とはこれでおさらばだ。」
「そっか……」
魔王との別れを、なんか少し寂しく感じている自分を殴ってやりたい。
「……まぁ、色々世話になった。達者でな、」
「勇者……」
「エルダー、でいい、」
「う、うむ……ではエルダー、貴様もな……、必ず目的をはたせよ、そしてあの世界を取り戻し、戦の続きをしよう‼︎」
……そこで、魔王の気配がどこかへ消えていったことを感じる。
「……行ったか、」
魔王の気配が消えると同時に、なんとも言えない喪失感に襲われる。
だが、いつまでも別れを惜しんではいられない。
……いや惜しんではいないけど、
「さて、まずはこの世界がどういう場所なのかを調べるか、」
気持ちを切り替えて辺りを見回す。
目に入るのは木、木、……ひたすら木、
「……ここは、森なのか?」
だとしたら、出だしから最悪だ。
森の大きさにもよるが、ある程度土地勘のある元の世界ですら、森へ入る際は、万全の準備をして、複数人で入るのが基本だった。
それなのに、今の自分は、
持ち物はなし、土地勘もなし、近くに人も見当たらない。
どちらへ向かえば出られるのか、ここはどういう地形をしているのか、生存に必要な情報が何一つない。
「……どーすんの、これ」
詰んだぞ?
出口が分からない以上、無闇に動くのも危険だが、同時にこの森にどんな危険があるかも分からない。
「……オオカミさんとかいないよな?」
さすがに素手の状態で、オオカミの群れに囲まれたりしたらひとたまりもない。
色々考えた結果、エルダーが出した答えは、
「人に会えますように、人に会えますように、人に会えますように……」
”神に祈りながら、自分の勘に任せて、適当に進む”だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます