第12話

待ち合わせのレストランに着くと、もう水戸兄はそこにいた。

「兄ーーっ」

環ちゃん、相変わらず可愛い…。

「お待たせしました。今日はよろしくお願いします。」

頭を下げると、私に続いて依莉も頭を下げる。

「まあまあ、かたくならないで〜」

ふっと顔をあげると、水戸兄が依莉の下げた頭をぽんぽんってしていた。

フレンドリーな人だなぁ…。でもなんで依莉だけ…って、別にいいじゃない。今日はディベート!

依莉がちょっとびっくりしたように顔をあげた。

「えっと…それで、今日は…?」

「待って待って、その前に注文しちゃおう…」

そついうと水戸兄はメニューを出す。結構お腹空いてるけど、男の人の前だし、あんまり食べすぎない方がいいのかな…。女子校を拗らせていてわからない…。まあいっか。

「すみませーん。」

「はい、お伺いいたします。」

「あ、えと、僕はこのハンバーグセットで。はい、環。」

「私は、このドリアを…」

「あ、それ2つで…」

「すみません、3つでお願いします…」

みんな同じものを注文しているから笑ってしまう。ひと通り注文が終わると、水戸兄がこちらを向いた、

「それで、ディベートの説明だっけね。まあまあ、その前にこの前はちゃんと聞けなかったし、自己紹介とか、冬大会の感想とか聞きたいんだけど…」

「冬大会の感想ですかー…」

「兄、それは昨日3人でやったの!自己紹介だけでよくない?」

「お前は黙ってろー」

「なんで、私にも関係あるし!」

…ふふふっ本当にこの兄妹仲良いなー。

「んーじゃあまあいいや。自己紹介とーやってみたいパートとその理由!だけ!はい、じゃあえーっと、覚えてる、覚えてるよ。あ、そう、三笠さんから!」

「えっ?私からですか…?」

「交流会で、二反やりたいって言ってなかったっけー?」

「…そうでしたっけ…。よく覚えてましたね…。」

「はいはい、じゃあ自己紹介と詳しい理由ね。」

「…えーっとですね…」

昨日話したような事を繰り返す私たち。まあ、もちろん「水戸兄がかっこよかった」って話は秘密だけど…。

ひと通り話し終わると、水戸兄は少し笑っていた。

「ふーんそっかー。二反2人に立論1人ねぇ…」

「何、兄。ニヤニヤして。そんなに嬉しいわけ?」

「別にぃー?それで、じゃあ本格的にディベートの話に移ろうか。」

「「お願いします。」」

「ちゃんと話してよね、兄。」

「うん、じゃあまず、言葉の説明からだね…」


その後、水戸兄は様々な話をしてくれた。現状分析など、立論に使われる言葉から、立論の立て方など準備の話、フローシートの取り方、各パートの役割などなど…。

「なるほどなるほど…。とてもわかりやすいですね!」

「三笠さんにそう言ってもらえると嬉しいなあ」

「兄、デレるのやめて、気持ち悪い。」

そういえば、さっきから若干環ちゃんにツンデレ感が出てるのは気のせいかな……。

「でも、これでやり方は分かった訳だし!早速…」

「いや、それは無理じゃないかなっ?えり」

「どうしてよーやらないと何も始まらないでしょ?」

「まあそうなんだけど…」

「依莉さんは気が早いね、まあ、すぐ出来ないこともないからね…。そうだな、このあと公民館に行くんだよね?そこでちょっとやってみようか。」

「ほんとですか!やったぁぁ!」

依莉の喜び方は尋常じゃない。とってもやるのを楽しみにしてたんだろうな…。と、いう私もさっきから興奮しすぎて声が出てないのだけど。

「じゃあ、行きましょう!公民館!近くの取ってあるので!」

お会計を済ますと、ハイテンションな依莉の後に続いて、お店を出た。

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