第10話

「よし、じゃあ記念すべき第一回の部活を始めるよ!」

おぉ〜パチパチ…って3人だからなんか悲しいね。

「実はっノートを用意したんですっ記録しますよーっ」

「さっすがたまきー!」

「私もたまには役に立ちたいですからねっ」

「いっつも頼りにしてるよー♡」

むぎゅーーって環ちゃんに抱きつく依莉。相変わらずだなぁ…。

「で?ディベートの話はー?」

「そうだった、そうだった。ありがと三笠。」

社会科室の前へ歩いていく依莉。これから何か発表する大臣みたいな歩き方してる。本当にこういうの好きだなぁ…。

「んんっ。えー本日はお集まり下さり、誠にありが…」

「えり、どうしたの…」

「ごめんね、環ちゃん。依莉、ああやってふざけるの好きなの。」

「えっ…そうなのですかー…」

「ほらっそこっ私語は厳禁ですぞ!」

「もうやめなさい、依莉。」

「えーーー。」

ぷくっと頬を膨らませても、無駄だぞ!

「じゃあ、環ちゃんから。この前の感想、言ってこー!」

「ええっ私からですか…。」

環ちゃんはどんな感想を持ったのかなぁ…。


「…私の感想。んーと、まず……いや、これ言うのは恥ずかしいですっ」

「なになに?気になる…教えて?たまきー」

「うん…えと…兄が…かっこよかった…です…」

えへへっ…と笑う環ちゃん。すごく可愛い。こんな妹欲しい…。

「今まで兄が真剣に何かをやってるところ見たことなかったのでー…新鮮で…

あっえと、ディベート本体の話をしますねっ

頭の回転が速くないと大変そう…ですけど、準備とかも色々するみたいですし、ちゃんと出来たなら私たちにもある程度試合できるかなって思いましたっ

兄に教えてもらって、大会に出ましょうっ」

私と依莉は黙って頷く。

「そっそれで…私は兄と同じパートがやりたいなっなんて…肯定二反…。でもっ否定二反も楽しそうだなーって思ってます…そんな感じです…」

「そっかそっかー!じゃあ私が何か言う前に、三笠に言ってもらおうかな?」

「えっ私ー?」

「そうだよ?他に誰がいるのー」

まあそうか…。

「じゃあ、私の話するね。

えっと、ディベート全体については環ちゃんと大体同じ。補足でいうなら、私は論理立てて色々話すのが割と好きなんだな、って気づいて、さらにディベートやりたい気持ちが強まったーって感じかな。」

「…三笠ってそんな話し方してたっけ、もっとほわわーんとしてなかった…?」

「実はーちょっとこの前ディベート聞いてからそれっぽーい話し方練習してたんだけど…」

「えっ…ぽいけど…割と怖いよ?」

ひぃ〜というポーズをとる依莉。

「別に怖くてもいーもーん」

「…むーっ三笠の話し方好きだったのにー」

「わかったーじゃあ戻すって」

「ありがとっで、パートは?」

「あ…うん。環ちゃんとかぶっちゃうんだよね…私も二反やりたいなーなんて、思ったり…」

「そっかぁ…被ったかー」

「大丈夫ですよっ否定と肯定、2つありますしっ」

「そうね…試合の最後に全部をまとめるっていうのがいいなーって思って。それに…水戸兄、かっこよかったし」

「そうだよねー!お兄さん、かっこよかったー」

「わぁっ!兄は私のものですよっ」

環ちゃんの言い方が可笑しくて、3人で笑い出す。

「…次は、えりだよっ」

「あ、そだそだ…えーっと私はねー」

実は、一番気になるのは、依莉の反応。この子は本当に読めないからな…

「うん。ディベートについては、私は話すより準備の方が楽しそうだなーって思ったんだよね〜

そんな意外そうな顔しないでよ〜メリットとかデメリットとか考えるのが楽しそうってことだよ」

びっくり…試合見てそんなこと思ったのか…。

「えりの発想、すごそうですっ」

「ふふふ…ありがと」

「それで…依莉はどのパートがいいと思ったの…?」

「んーとねぇ…それがあんまりこれ!っていうのはなかったんだよねー

でも…まあ、一番やりたいかな、って思ったのが応答!だから立論かなー」

応答……!やっぱり衝撃的。

「ちなみになんでか聞いてもいい…?」

「あ、うん。そんなに意外かなぁ…

自分たちの立場を説明する、根幹になるのが立論じゃない?それに、質疑されたときに、相手が何にどう反論しようとしてるかなんとなくわかるから…それを未然に防いで守るっていうのが楽しそうだなーって…」

「なるほどね…」

「じゃあっこれでみんなの感想は終わりですかねっ」

「そうだねーあ、もう16:45じゃん。そろそろ帰らなきゃねー」

本当だ。もうそんな時間かー。

「えっと、じゃあ明日は学校の後、水戸兄に色々教えてもらうからねっ楽しみにしてよう!」

…そうだ、いよいよ、始まる。


私はワクワクして、その夜、あまり眠れなかった。

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