第8話

15:45。決勝戦の審判の判定を待つ間、交流会が始まった。

受付の際にもらった番号の班に入る。

私の番号は、7だ。

「私は4だなー…。知り合い、誰もいないだろうな…」

「私は、9でしたっ…兄とは一緒にはなれなそうですよね…」

各々、班のところへ向かう。この大会の前に作っておいた交流用のメールアドレスのメモを携えて。

私の班は…。って、あっ…環ちゃんのお兄さんじゃない。

「こんにちは〜」

「あ、梅泉の!同じ班か〜」

交流会が始まる。班に1人進行役、みたいな人が付いてくれている。

「では、まあ、それぞれ、名前と学年、学校名、ディベート歴を言っていきましょうか。」

「えっと、慧進高校1年の水戸宏樹です。ディベート歴は今年の春から始めたので、1年弱、ですかね。」

「あ、はい。梅泉中学校3年の恩田三笠です。まだディベートやったことはなくって、今日は見学に来ました。」

あとの2人は高校2年の人で、来年にはやめてしまう、ということだった。ディベートやったことがない、という私のために色々話してくれる。

「今日見てみて、どのパートを1番やりたいと思った?」

…何がやりたいか。やっぱり、1番興奮したのは…

「第二反駁…です、かね。みんなが雰囲気に包まれていくのがすごいなって…」

「第二反駁かぁ…」

「お、三笠さん第二反駁興味あるの?」

環ちゃんのお兄さんが反応する。

ってえぇ?三笠さん…?下の名前かぁ…。まあ、いっか。それにしてもフレンドリーな人…。私もなんか呼ぼうかな…

水戸兄みとあにの第二反駁、すごかったです!」

「そうかな…今日失敗したんだよな…」


そんな話をしている内に、審判の方々が戻って来た。忘れずに同じ班の人にメールアドレスのメモを渡す。


「それでは、審判の判定にうつります。この試合の終了時間は、16:10です。」

今は…16:00。

「選手のみなさん、お疲れ様でした。両校ともレベルの高い議論を出していて、まさに決勝戦と呼ぶに相応しい試合だったのではないかと思っています。では……」

講評が始まった。私も拙いフローシートを見ながら話を聞いていく。

時間がないからか、巻きで講評が終わってしまった。

「…えーこの試合の判定、割れています。4-1です。

では、判定の前にコミュニケーション点。

肯定側、立論18点。質疑16点。応答16点。第一反駁15点。第二反駁17点。……」

水戸兄は、17点か。あ、そうだ。コミュニケーション点って何か、聞きそびれちゃったな。

「…では、判定を発表します。今回の試合、4-1で

否定側、駒山学園高等学校の勝利です。お疲れ様でした。」

…慧進が、負けた。今日会った人だけど、なんとなく応援していたから、残念だ。

自然と沸き起こる拍手。肯定側を見ると、水戸兄が謝っているのが見えた。

「両校の選手のみなさんは握手をしてください。」

握手をする両校。


少し経って、閉会式が始まった。決勝戦にでていたメンバーの中で最もいいスピーチをした人にベストディベーター賞、というのが贈られる。

「ベストディベーター賞の発表です。呼ばれた方は前の方にお越しください。決勝戦主審の河野こうのさん、お願いします。」

「えー今回は、様々な論点の出る論題の中で、最もよく自分たちの立場を示した人に送りたいと思います。ということで、

肯定側立論、菊本颯さん。」

あ、マイクなしのあの人だ。とっても通る声だったものな…。


閉会式が終わり、3人で話をする。

「どうだった今日?」

「私はっ…やりたいと思ったよ、3人で。」

「うん、み…っと環の言う通りだよ、やろう、ディベート。この、3人で。」

「よかった…。みんな同じこと思っていて。」


やろう。ディベート。この、3人で。

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