第3話

キーンコーンカーンコーン。12:30の鐘。待ちに待っていたお昼がやってきた。私は水戸さんとは面識がなかったから、どんな子だろう、ってドキドキしていた。

2人でテキパキと昼食を済ませてe組に向かう。

「水戸ちゃんいるー?」

躊躇いなくe組に入って行く依莉。緊張とかしないんだね…。

後からついて入って行くと、依莉が誰かと話していた。

「その子が水戸さん…?」

「あ、うんそう。恩田さんです。」

「恩田三笠です。よろしくね。」

「あ、水戸環です。よろしくです。」

可愛い子だった。所謂漫画の萌え系の可愛いさだ。

「それでさ、水戸ちゃんが声かけてくれたのって、ディベートのことだよね?」

「そうなのですっ実は…私の兄がディベートやっていてですね…」

なんと!?私と依莉は顔を見合わせてニッコリした。

「本当!?なんて貴重な!」

依莉が大声で言いすぎたせいで教室の注目を集めてしまった。気まずい…。

「それで…私も経験ないんですけど、一緒にやらせてもらいたくてっ…」

小声で水戸さんが言う。

「私、環ちゃんって呼んでいいかな…?これからよろしくね。」

「えっ…私も一緒でいいんですか?おん…えっと三笠ちゃん。」

「もちろん!ね、依莉?」

依莉はこれ以上ないくらいの笑みを浮かべている。

「コーチも、メンバーも見つかった!これで同好会が出来る!!」

3人で思わず抱き合ってしまう。

「よし!放課後、届けを出そう!」

「えっ…はやっ。そういえば、依莉、顧問のあてはあるの?」

「まっかせといて!」

バッチリ決まるウインク。ちょっと心配だけど、まあ、大丈夫…かな?


放課後。

自信満々に職員室に向かう依莉の後ろを私と環ちゃんでそーっと付いていく。かなり不安だ。誰に声をかける気なんだろう…。

依莉が職員室の扉を開ける。

「失礼します!中学3年c組石川依莉です!やっさ……安久やすひさ先生いらっしゃいますか?」

なんと!やっさんか…。安久先生、というのは、政治とかを教えている社会の先生で、みんなからやっさんと呼ばれている男の先生だ。うちの学校はこの学校出身の先生など女の先生が多くて、男の先生が少ないのだ。その中でもやっさんは30代くらいで1番話しやすい。

「ん…?石川さん?どうした?」

「あの、同好会作りたいんですけど、顧問になってもらえませんかー?」

「俺が?え……。確かに、どこも顧問持ってないけど…。」

「大会の申し込み、引率とか、そういう事務処理さえやってくれればいいんですよ!」

「…はぁ。正直だなぁ…。そんな話し方で、俺がやると思うか?」

…やっぱり、厳しいんじゃないの、そう言おうとした時、依莉がやっさんに何か耳打ちした。すると…

「っ全く。わかったわかった。やるよやるよ。で、何の同好会なんだ?」

…何があったんだろう。

「ディベートです!」

「ディベート…。そうか。で、メンバーは?何人だ?」

「私と、恩田さんと、水戸さんの3人です!」

「3人…?まあ、最低人数だから、いいか。よし。手続きはしといてやるよ」

「ありがとうございましたー!」


あっさり許可されてしまったので、私と環ちゃんは驚いていた。

「依莉…?何耳打ちしたの?」

私は恐る恐る聞いてみる。

「ん?先生のプライベートだからなー一応話さない!まあ、大したことじゃないよ〜」

そう言って依莉はニコニコしている。

なんか、怖いけど…。まあ、通ったならいいか!

「あ、そうだ。会長が私で、会計が三笠で、書記が水戸ちゃんでいいかな…?三笠、そういうの、得意じゃなかったっけ…」

「あ、うん…そうだね」

「水戸ちゃんも、いい?」

「あ、はい!これからよろしくお願いしますっ」

「うん、じゃあ、梅泉学園ディベート同好会、ここにほっそーく!頑張って、全国目指すよーー!」

「「おー!」」

つられて言ってしまったけど、全国…?全国…?

私の顔を読んだかのように依莉が言う。

「あ、うん。夏に全国大会あるんだって。関東で勝てば、行けるみたいだよ?」

…そんな、簡単でしょ?みたいな顔で言わないで。

まあ、目標は高い方がいいのかな、なんて思いながら、全国、という言葉に青春を感じてニヤニヤしてしまう。

他の2人も同じ気持ちなのか、3人でニヤニヤしていた。

心が1つになったのを察したのか、依莉が言った。

「目指せ!全国!!」

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