第2話

私たちのディベート経験者探しは、とっても難航した。

その日の放課後、近くにいた人には声をかけてみたが、ディベート、っていう言葉自体知っている人が少なかった。

「だから言ったでしょ?経験者なんて、そうそう見つからないって。学年、240人もいるのよ?」

「うーん…学年全員名前と顔覚えてるはずなんだけどなー」

「えっ、いやそれもそれですごいけど…。だったら尚更、その中に経験者いるように思える?」

「うーん…そっか…。あ、じゃあさ、経験者じゃなくて、メンバー集めるの、どう?最悪独学でもいいじゃない!」

「えぇ…まあ、いいけれど…」

「っていうか、三笠、すっかりノリノリだね!やっぱり三笠なら一緒にやってくれると思ってたんだよな〜」

…見透かされている。かるた部の公式戦に出られない私は、もっと打ち込めるものが欲しかったみたいだ。ディベートの話を聞いてからワクワクが止まらない。


何日かディベートをやらない?と知り合いに声をかける日々が続いた。かなり親しくしている人とかクラスの人に声をかけたけど、興味はあっても、兼部出来ない決まりなので、今の部をやめてまで入りたい、という子はいなかった。今部活に入ってないのも、それなりの理由がある子が多く、なかなか難しい。

「やっぱり厳しいのかな…?」

「でも、最近、私たちがディベートやりたい人探してるっていう噂が流れてるみたいだから!もしかしてやりたいって子が来るかもしれないじゃない?」

依莉は本当にポジティブだなぁ…。

「そ、そうだね。地道に声をかけていくしかないかな」


翌日。昨日の依莉の発言が現実のものになった。

「あのー。石川さんと恩田さんってこのクラスですか…?」

そういってうちのクラスにきた人がいたらしい。石川さんっていうのは依莉のこと、恩田さんっていうのが私のことだ。私たちはその休み時間も、他のクラスに声をかけにいっていたので、その子には会えなかった。

教えてくれたクラスメイトに聞く。

「それって、誰だったかわかる?」

「うーん誰だろう…私あの子知らないんだよね」

「そっか…教えてくれてありがとね」

「ん?20分休みに来たあの子?e組の水戸みとさんじゃないかな?」

「え、水戸ちゃん?」

依莉が反応した。

「えーっと、水戸さんって2人いるけど、下の名前がたまきちゃんの方だよね?e組ってことは。」

「そうそう。」

「ありがとー!」

流石、依莉。学年全員の顔と名前を覚えているだけある。

「じゃあ、お昼に水戸ちゃんの所に行こう!」

「そうね…!」

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