13*過保護すぎる護衛騎士

「う……」


 ロゼフィアはぼーっとしながら起き上がる。


 目が覚めたのは朝日がカーテンから漏れていたせいだろう。この部屋はベッドと窓の距離が近く、朝日が枕元を照らすようになっている。もっとも、そのためにベッドが意図的に置かれているのかまでは分からないが。この研究所を作るにあたって、サンドラがその指揮を執ったらしい。もしかしたらそこまで計算して作ったのかもしれない。普段はへらへらしているようで、頭の回転はとても速いから。


 だが毎回朝に眩しい光が目元に来るのはちょっと勘弁かもしれない。いい目覚まし時計にはなるが、それでももっと寝たい時に寝られない。二度寝をしようと思っても光は容赦なく強くなるし(日が昇っていくから)、シーツを被ればいいだけかもしれないが、それじゃ結局息苦しくなる。


 幸い今日はすぐに起きられた。

 だが良い目覚めとも言えない。


「……頭痛い」


 ロゼフィアは自分の頭を押さえた。







「はい、頭痛薬」

「ありがとう」


 サンドラから薬を受け取る。

 すぐに水と一緒に飲んだ。


 相手はくすくすと笑う。


「疲れた顔してるねぇ。部屋は快適にしてるはずなんだけど」


 今ロゼフィアはこの研究所で寝泊りをしている。前は王城だったが、さすがにいつまでもそこで寝泊りするのは気が引けたのだ。これからは研究所で働くわけなのだし、こっちの方が都合がいい事もあり、部屋を与えてもらった。研究所は広い事もあって、空き部屋がいくつかある。


「部屋は快適よ。よく眠れたし。疲れた顔してるのは頭痛と筋肉痛のせいね」


 実際その通りで、腕と足が筋肉痛になっていた。だがその理由は薄々気付いている。昨日とにかく動き回っていた事や、ジノルグに変な事を言ってしまった事は覚えているのだから。


 するとサンドラは珈琲を飲みながら頷いた。


「昨日のロゼはすごかったらしいね。色んな研究室に入っては皆に指導してくれたらしいじゃないか。新人の子達に教育したり、実験が上手くいかなかった子達にはやり方を教えてあげたり、庭園では自ら植物に水やりしてたって、皆嬉しそうに話してくれたよ」

「え、嘘」


 思わずサンドラの顔を凝視してしまう。


 色んな研究室に入っては色んな人と関わっていただなんて、信じられない。動き回っていた事はなんとなく覚えていたが、そこで何をしたのかまでは覚えていなかった。もちろんこれからはもっと人と関わっていきたいと思ったりするが、今までずっと最低限の人としか関わっていなかったのだ。いきなりそこまで干渉できるはずもない。あの時の自分はかなり行動力があったらしい。


「私が思うに、薬がいい効果を出してくれたね。あれは楽しい気分になるらしいからね。ロゼは薬学も植物も大好きだし、思わず素が出たんじゃないかい?」

「あれが素? 無意識に身体が動いてたし、何したのか自分では覚えてないし、挙句の果てに起きたら頭痛と筋肉痛だなんて!」


 するとサンドラは何やら紙を取り出す。

 こちらを気にもせず、そこに書き足した。


「頭痛はおそらく薬の副作用かな。酔っ払い風なわけだから、二日酔いみたいな感じだろうね。ロゼは頭痛だったけど、他にも副作用があるかも。筋肉痛はロゼが走ったからだろう? ロゼとジノルグくんが鬼ごっこしてたのは他の人も見てたらしいよ」


 なるほど、足の筋肉痛は走った事もあってか。そういえばこっちに来てから身体を動かしていない。身体がなまって久しぶりに筋肉痛になったらしい。サンドラのおかげで事の真相は分かったわけだが、それでもそれを周りに見られていたという事が地味に恥ずかしいと思った。


 と、そこで気付く。


「そういえばジノルグは?」


 いつもならこの時間には挨拶に来るはずなのだが。ジノルグも護衛がしやすいよう、研究所で寝泊りしている。四六時中一緒、とまではいかないが、必ず顔は合わせてから一日が始まるようなものだ。


「ああ、今日は騎士団の方だよ。稽古を頼まれているらしくてね。昨日ロゼが寝た後にリオネくんが訪ねてきて、どうしてもやってほしいって。今日の護衛はクリスに任せてくれるそうだ」

「そ、そう」


 少しだけ面食らってしまう。護衛をするのが仕事だと言っていたが、それでもジノルグは一般的な騎士と変わらないのだなと思った。自分の護衛をする以外にも仕事はたくさんあるだろうし、実力はあるし、皆からも好かれている。こういう時、自分よりも彼に求められている仕事は他にあるんじゃないかと思ってしまう。


 するとサンドラは急に話題を変えた。


「そういえば寝てたロゼをジノルグくんが運んでくれたけど、嬉しそうな顔をしていたよ」

「え?」


 思わず聞き返す。


 いつの間にか寝て、しかも運ばれていたなんて聞いていない。しかも寝ていたのだから自分はその顔を見ていない。だがなぜそんな表情をしていたのだろう。何が嬉しかったのか。


 そう聞けば、サンドラは意味深で微笑む。

 特に何も言わない辺りが余計気になった。


「騎士の仕事はたくさんあるが、優先順位は自分の中にある」


 急にクリストファーが口を開く。

 実はずっとサンドラの傍にいたが、黙って話を聞いていたのだ。


「……それが?」


 急に何だろうと思えば、嫌そうに眉を寄せられた。

 むしろ分からないのか、と言われている気分だ。


「いくら色んな仕事をしようが、あいつの中ではあんたが一番って事だ。だからそんな寂しそうな顔するな」


 一瞬間ができる。

 ぎょっとして叫んでしまった。


「さ、寂しそうな顔なんてしてないわよっ!」

「今してたじゃないか」

「してない!」


 全力で拒否する。してない。本当にしてない。そう言われるという事はそう見えただけであって、寂しいなんて思ってない。ただ自分よりも優先すべき事があるんじゃないかと思っただけだ。


「まぁまぁ。そんな寂しそうなロゼに一つ」

「サンドラまでっ!」

「今日はロゼに配達を頼むよ」

「……配達?」







 研究所から馬車で移動して騎士団に向かう。


 わざわざ馬車がある事にも驚きだが、ロゼフィアが座っている場所以外は大量の薬の箱が積まれている。これを歩いて運べと言われたら正直無茶な量だ。ちなみにクリストファーも付き人として馬を走らせながら来てくれている。サンドラに頼まれたのは、騎士団から注文を受けた薬を配達するものだった。


 騎士が研究所に来て薬を取りに来る場合もあるらしいが、大抵忙しくてそこまで回らないらしい。だからこちら側から行くのだとか。どういう仕組みで行っているのか、一度体験するのもいいだろうという事で任せてくれた。確かに今まで森で暮らしていた時は、騎士の方が来てくれた。こちらが持っていけるほどの余裕はなかったため、向こうが合わせてくれていたのだろう。


 無事に到着してから、持てるだけ薬の入った箱を抱える。クリストファーは軽々と山のように積みながら運んでいた。そんな状態なのに落とさず運ぶところはさすがだ。一旦受付らしき場所があるので、そこまで全部運ぶ。数と注文した薬が合っているかを確認すれば、配達は終了だ。案外簡単だった。


 一息ついたところで、クリストファーに聞く。


「私の付き添いで来てくれたけど、サンドラはいいの?」

「は? 俺は分裂できないぞ」

「いやそうじゃなくて……」


 今のはボケてくれたのかそれとも素で言ったのだろうか。だがクリストファーはいつもと変わらないむっとした顔をしているので、わざわざボケた様子ではない。なのでロゼフィアは普通に言った。


「私の護衛は、他の騎士に任せてもいいんじゃないかって」

「ああ、そういう事か」


 理解してくれたらしい。

 律儀に説明してくれた。


「護衛騎士が動けない場合は、他の護衛騎士に頼む事はある。護衛騎士は他の騎士より信頼も高い。それにサンドラは今研究所にいる。どこかに移動するなら心配だが、あそこは比較的安全だ。それに笛もある」

「え、ちょっと待って。護衛騎士って何? 普通の騎士と違うの?」


 むしろその単語は初めて聞いたのだが。

 すると意外そうな顔をされる。


「聞いてないのか?」

「ええ」


 クリストファーは何やら舌打ちする。

 ぶつぶつジノルグの文句を言っていた。


 そしてすぐに教えてくれる。


「護衛騎士はその名の通り、護衛としてついている騎士の事だ。護衛騎士には条件もある。一つ、騎士が本当にその護衛対象を守りたい意志があるかどうか。一つ、殿下の了承を得ているかどうか。俺達以外にも護衛騎士はいるが、数は少ない。サンドラとあんたは基本的に研究所にいるから、ジノルグも俺に頼みやすいんだろう」

「へぇ……」

「むしろ迂闊に他の騎士には頼めない。何かあった時は責任を取らされるし、護衛騎士からすれば何かあるなんて言語道断だからな」


 なるほど。なかなか重要な役割として存在しているようだ。だから他の騎士に護衛されるという事がないのか。かなり責任重大なのだなと思いつつ、自分に護衛騎士を与えられたのはやはり魔女だから、というのが大きいのではないかと考えた。サンドラだって重要な室長という立場だし、そうでもしないとわざわざ護衛騎士なんてものを立てないだろう。王族の許可もいるとなると、私的な理由だけでは認められない。


 最も。


 ロゼフィアはちらっとクリストファーを見る。


 彼はサンドラを守る意志がとても固い。それはきっと、サンドラが重要な立場にいようとも、いなくとも。最近よく話す機会が増えたが、それは見ていて分かる。本当に彼女を守りたいのだろうなと。


「俺もジノルグも、護衛対象が一人になる場合に護衛をする。それ以外はその時の状況による」

「そうなのね」

「でもあいつ、」

「?」

「いや、なんでもない」


 急に言葉を濁される。


 言いたくないのなら無理に聞く必要もない。ひとまずサンドラに頼まれた仕事は終わったし、研究所に戻るだけだ。ロゼフィアは馬車がある場所まで移動しようとした。


「おい、待て」

「え?」

「まだ残ってる」


 そう言いながら渡されたのは白い箱だ。

 中には救急セットが入っている。


「これって」

「稽古場に運んでほしいそうだ。ジノルグもいるだろうから、顔を見せたらいい」

「え、いや、別に渡したらさっさと」

「あいつも喜ぶと思うぞ」

「…………」


 そう言われても、どう反応していいか分からない。

 とりあえず頷いたが、なぜか相手はふっと笑ってきた。




「そこだっ! いけー!」

「後ろ取られてるぞー!!」


 相変わらず稽古場は熱気が溢れている。


 ロゼフィアは邪魔をしないようにそっと中に入る。すると大勢の騎士の姿があった。前にサンドラと来た時はまだあどけない顔をした騎士が多かったが、今回はそれなりに騎士歴が長そうな人達ばかりだ。凛とした佇まいと真剣な表情をしている。そこには女性騎士の姿もあった。


「ロゼフィアさん!」


 名前を呼んだ高い声に振り向く。

 すると見知った女性の姿があった。


「サラ!」

「お久しぶりです」


 彼女はにこっと笑ってくれる。

 会うのは花姫の時以来だろうか。


「今日はどうしたんですか?」

「救急セットを持ってきたの」

「ああ、助かりました。そろそろ限界だったので……」

「限界?」


 するとサラは苦笑しながら違う場所に目を向ける。稽古の後なのか、ぐったりしている騎士が数人屍のように倒れていた。しかも皆、どこか負傷しているのか手当を受けている。そこまでひどい怪我ではないようだが、精神的に疲れ切っているのが見て取れる。


「ど、どうしたの。これ」

「今日は鬼教官が稽古をつけてくれてますから……」


 すると急に身体が倒れるような音が聞こえて来た。驚きつつ見れば、稽古場の中央で剣を交わっている騎士が二人いる。そのうちの一人が倒れていたが、その騎士に剣を向ける人物の目が容赦なかった。しかもその人物というのが、ジノルグだ。


「くっそ、これで何人抜きだ?」

「相変わらずジノルグ強いなぁ」


 周りで見ていた騎士も感想を述べている。


 ロゼフィアも声が出なかった。

 いつもと違い過ぎて。


 すると今度はきゃあっ、と黄色い声援が飛んでくる。


「ジノルグ殿、相変わらずかっこいい……!」

「あの剣技は本当に惚れ惚れするわぁ。あんなに強かったら守ってもらえる人も幸せでしょうね」


 きゃあきゃあ言っているのは女性騎士達だ。見れば可愛らしい人が多い。女性陣からも慕われているようだ。そしてそんな彼に自分は護衛をしてもらっているわけだが、残念ながら嬉しいだの幸せだのと感じてはいない。理想と現実はなかなか厳しいものだ。


 こちらの様子を見ていたのか、サラが耳打ちしてくる。


「ジノルグ殿は誰よりも厳しい方ですが、強くて優しいです。ファンもけっこういるみたいで」

「そうみたいね」

「男性ファンも多いですよ」


 同性からも好かれているなんてよっぽどだ。だが、確かに憧れを抱く者は多いだろう。どんなに称賛されようとも、それを鼻にかけずに自分の意志を貫く。騎士として剣を振るうジノルグを見て、その姿がとても綺麗に映った。思わず見惚れそうになる。


 そのまま次の試合が始まりそうだったのだが、ふとジノルグと目が合う。はっとしてロゼフィアは避けたが、ジノルグは気にせずこちらに向かって小走りでやってきた。自然と他の騎士達からも注目される。


「ご、ごめんなさい。邪魔するつもりじゃなかったんだけど」


 慌てて謝る。謝る必要もないのだが、なんとなくこうなってしまった事が申し訳ないように思ってしまった。見れば何度も試合をしていたのだろう。息は乱れ、額にある汗も尋常じゃない。髪までも濡れてしまっている。だが相手はなぜか微笑んだ。


「いや、元気そうでよかった」

「? 元気だけど」

「だが昨日は」

「だ、それは別に、昨日の事なんて持ち出さないでよっ!」


 思わず赤くなって怒鳴ってしまう。


「おーいジノルグ。いつも独り占めしてるくせにこの時間も美人を独り占めにするつもりか?」


 急にジノルグの肩に手をかけてきたのはレオナルドだ。にやにや笑いながらからかっている様子はいつも通りである。すると他の騎士も別の方向からジノルグの肩に手を置いた。


「ほんとだぜジノルグ。俺達は関わる機会ないんだからこの時間くらい譲ってくれよ」

「な、お前ら……」


 どんどん他の騎士もやってきてジノルグの周りを囲った。ここまで聞こえないが、何やら色々言われているようだ。だがそんな事をしている間にも、ロゼフィアの周りを女性騎士達が囲った。


「髪がさらっさら! すごいきれー!」


 ロゼフィアの髪を見て称賛してくれる。他にも興味深そうに見られたり、前回稽古場に来た時の反応と同じだ。少し驚いたが、それでも気さくな人が多かった。何より同性なので、話しやすい。


「あ、あの」

「ん? 何ですか?」

「よかったら、私にも剣を教えてほしい」

「え、それは別に構わないですけど……」

「でもどうして? ジノルグ殿が護衛をして下さるのに」


 女性騎士達はそれぞれ顔を見合わせていた。

 確かに普通に考えたらそんな事をする必要はないだろう。


 だが、もしもといった時もある。それに剣を振るうジノルグを見て、自分もやってみたいと思ったのだ。きっとあんなに綺麗に扱えないだろうが、それでもやってみたい。だがそれを言うのも少し気が引けたので、「興味があったから」と無難な言い方をした。


 すると急に別の騎士が手を挙げた。

 

「じゃあはいはい! 俺教えますよ?」

「おい抜け駆けかよ。それだったら俺が」

「ちょっと男は黙って! 魔女はあたし達に頼んでるんだから」

「そうよ。そんな下心見え見えのくせに魔女を渡すもんですか」

「はぁ!? 教えるんだったらお前らより上手い俺達の方がいいだろうが」

「なんですって!?」


 なぜか騎士達が揉め始めた。


 そして誰が魔女に教えるのか、を永遠と議論する。

 中には剣を取り出してその場で戦いが起こりそうになる。


 元々緊張感があったが、より緊張感がある空気になり、ロゼフィアは失言をしたかもしれないと慌てた。誰かが譲ればいいのに、正直誰でもいいのに、皆自分に教えたいらしい。サラがこっそりと、騎士は誠実で真っ直ぐな人が多い分、プライドが高い人も多いのだと教えてくれる。いつまでもいがみ合いが終わらない様子なのでどうしようかと思っていれば、急にその場に響き渡る声が聞こえた。


「いい加減にしろっ!」


 一斉にしんとなる。


 見ればそう言ったのはジノルグだ。

 怒鳴る姿も初めて見た。


「俺が教える」

「「「「え」」」」


 ロゼフィアを含ふ皆が声を揃える。

 するとレオナルドが呆れた顔をした。


「おいおい無茶言うなよ。今日は後輩達の稽古つける日だろ」

「そうですよジノルグ殿。俺、まだ稽古つけてもらってません」

「私もです」


 他にも次々騎士が名乗り出る。

 するとジノルグも少し怯んだ。


「また時間がある時にジノが教えればいいだろ。今日は別の奴に」

「じゃあレオンが教えてくれ」


 速攻でそう言われる。


 信用してくれているからこそ言ってきたのだろうが、それでもなぜ他の者にやらせないのだろうとレオナルドは思った。少し過保護な気がする。むしろ教えるのなら同性の方がやりやすいだろうに。いつもならここでそう言ってあげるのだが、なんだか面白そうだったので言わないでおいた。


 そして鼻で笑って拒否する。


「俺は審判役だから無・理」

「じゃあ俺が」

「いいえあたしが」

「うるさいっ!」


 また他の騎士達が騒ぎ立てようとしたが、ジノルグの先手でまた静かになる。なぜかいらいらしたような顔をし、そしてその場にいる騎士達を一瞥した。それはまるで睨んでいるようにも見える。


「じゃあ全員まとめてかかってこい。俺に勝った奴に教える権利をやる」

「えっ」

「まじっすか」


 一瞬動揺するような声が漏れる。

 それはいい提案に見えて、騎士によっては判断に迷うだろう。


「なんなら複数仕掛けてきてもいい」


 これにはレオナルドも「わーお」と苦笑する。

 複数なんて、どう考えてもジノルグの不利になるのに。


 ロゼフィアはジノルグの傍に寄る。

 こうなってしまったのは自分のせいだ。


「ごめんなさい。別にもう、」

「ロゼフィア殿は見ててくれ」

「え?」


 真剣な顔で目を合わせてくる。


「俺は負けない」


 そしてその横を通り過ぎた。


 それを見た女性騎士はこそこそと何やら話している。おそらくジノルグの男気にまたきゃあきゃあと言っているのだろう。傍で見ていたサラも、ジノルグの決意が相当強い事を感じた。そしてロゼフィアがどう思うのだろうと、そっと彼女に寄る。


「……サラ」

「はい」

「なんでこんなに大事になるのかしらね……」


 ロゼフィアはげんなりしたような顔をする。

 その表情に、思わずサラも同情した。

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