幕間
白い壁。白い床。白い電球。
視覚が壊れてしまいそうなその部屋に、魔術師は座っていた。目の前には灰色と白のチェス盤を置かれている。
その向かいに座る茶髪と黒髪の二人を見て、ニヤリと笑った。
幼さの残る青年二人は、交互に灰色の駒を動かして応戦していた。茶髪が動くたびに、彼の服につけられた大量の鈴が綺麗な音を奏でる。黒髪は音なく動くが、顔に笑みが貼り付いていた。何があろうと、その表情は崩れない。
魔術師が三十手目を動かした時。茶髪に同じ笑みが浮かべられた。
「チェックメイト…ですねぇ」
その言葉に答えるように、ケケケと黒髪が笑う。
魔術師は交互に彼らを見て、小さく肩を落とした。
「やっぱ勝てないなぁ…
「ケケケケケ まじゅつ、し…よわ、い ケケケ ゲホッゴホッ」
「大丈夫!?」
「だい、じょうぶ…おど、りこ…心配、しすぎ ケケケケケ」
黒髪は口元を抑えたまま、ハンカチを取り出す。シワのない白いハンカチで口を覆うと、くぐもった声で魔術師に問いかけた。
「つぎ…目標…ほ、んけの、にい、さん…?」
「ああ、そうさ。頼めるかい? ダンサー、モンスター?」
同時に頷く。容姿も性格も似ていない二人だが、その目は恐ろしい程まっすぐであった。
#*#*#*
人をダメにするクッションに座り、語り手は本を開く。
「…で、青年。いつ殺すんだい?」
「いつでもいい。です」
ぶっきらぼうに答え、板チョコをかじる。濃厚で甘い味が口の中に広がった。
「…ブラックチョコ、だよな……これ。ってうわ…ミルク増量ってなんだよ」
「御愁傷様。じゃあ、明日辺りに決行しようか」
悔しそうに眉根を寄せるフユトだったが、不思議そうに顔をあげた。語り手は相変わらず、人の話を聞いているのか聞いていないのか分からない様子で読書をしている。
「今日、じゃなくてですか?」
「んー今日はやめた方が良い。明日が一番いい……テレビでそう言ってた」
意外な答えに笑みを浮かべ、板チョコを黙々と食べ出した。
さぁて。物語は中盤戦。
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