一つ目
空は相変わらず蒼かった。
フユトが腰に差した鞘に刀身を納めると、ゆったりとした拍手の音が部屋に響く。拍手の主は彼の肩に手を置いて笑い声をたてた。
「合格だ。ようこそ、シャングリラへ」
興味なさげにフユトは頷きを返す。
主は口角を下げる。顔を覆う、オペラ座の怪人のような仮面が不気味さを際立てていた。
体中を使って哀の感情を表しながら、彼は仮面の縁をなぞる。
「喜ばしい事だろう? 君は一族を復活させれる。私はこの組織を発展できる……ウィンウィンだろう?」
「ん、ああ、すいません…感情の起伏が浅いだけです。俺も嬉しいですよ」
「そうかい、そうかい?」
頷きを返す。
それで彼は満足したのか。クルリとその場で回ると、フユトの両手を強く握った。小さな体からは想像できない程、強い意思が感じられた。
「さて。とりあえず君の名前を考えよう」
「名前?」
「ああ、そうだよ。だって…世界を壊すんだ。実名じゃ危ないだろう? それとも_」
顔を近づけ「何か不都合でも?」と笑う。握る力が一層強くなった。
首を横に振り、手を無理矢理離す。眉をひそめ、赤くなった手をコートのポケットに入れる。
「んー
アゴに手をあて小さく唸る。わざとらしいその仕草に、フユトは目を細めた。
しばらくそのまま無言であったが、ポンっと手のひらを叩き笑顔を浮かべる。
「……うん、これが君にぴったりだ。そうしよう」
クルリと回り、この部屋に唯一ある扉に手をかける。そして、肩ごしに振り返り手招きをした。
「ああ、そういえば名乗っていなかった」
フユトが足を進めた時、彼がポツリとそう呟いた。
「私は
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