真っ赤なバラを贈りたい人がいる


私は、何もしなくて良いと言われて、彼に愛されていることを確かめてから、いろいろなことができるようになった。


というか、したくなってきた。


アジーンはもしかしたら悲しんでいるかも知れないけれど、彼を思い出して泣くことも減った。

確実に前に進みたいと言えるようになった。


裁縫も、物覚えも、ゆっくりだけどできるようになってきた。

できなくても良いのだと言ってもらえることの楽さをしってしまった。

これはもしかしたら、あまりいいことではないのかもしれない。

それでも、存在して良いと言ってもらえたから、とりあえず良いとすることにしている。


「メリ?」


というか、クラワが何もさせてくれなくなった。

私の部屋に定期的に来ては、ただひたすら観察して、無理をしていないかを確認していく。

彼なりの愛情表現かも知れないけれど、若干重い。でも、それも心地良い。


私は、誰かのために生きたくて、必死だった。

そのためにただひたすらに頑張ってきた。

でも、その人がいなくなって壊れてしまった。


だけど、一生懸命、自分の言葉で愛を伝えてくれる、私を愛してくれている人がいたことに気づけた。


それってけっこう幸せなことなんじゃないかなって思えたの。


「今行くわ、クラワ。」


いつか私も彼に、返せる日が来るといい。

愛してる、という言葉を。

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