黄色いストックは枯れるのか?

「あの…クラワ様?」

「なんだ。」

「メリ様が…」


メリが、死にたいと話していることをメイドから聞いて。

もしかして、本気で死ぬ気なのだろうか。

初めて、自分が何かしなくてはならないのでは、と思い始めた。

彼女は、今どこまで、どうしてそんなにも苦しんでいるんだろう。




「ねえ、クラワ王子。」

「…なんだ。今仕事中だ。」

メイド達が気を利かせて作った2人の時間とやらも、私には無意味に思えて、ずっと仕事をしていた。

「そしたら私暇じゃない。メイドさん達がせっかく気を利かせてくれたっていうのにあなたにはムードってものがないのかしら。」

すっかり機嫌を損ねてしまい、仕事を進めながらもどうしようかと思考を巡らせていたら、突然メリが笑い出した。

「…何がおかしい。」

「あなたのその百面相よ。私そんなに機嫌悪くなってないわよ、あなたを見ていたら結構おもしろいんだから。」

「どういう意味だ。」

「あなた無口だけど、結構顔に出るもの、何歳から婚約者としてずっと一緒にいると思っているのよ。」

ばかねえ、気にしなくて良いのよ。

そういって頭をなでてきた彼女に悔しいような、安心したような、負けたような気がしてむっとしたのを覚えている。

俺の方が年上のはずなのに、精神年齢はメリの方がずっと上のような気がしていて、何となく納得できなかった。



私はそれに、メリの優しさと余裕に、甘えていたのだろうか。




メリは、とても強情で、笑顔を絶やさないプライドの高い人間だった。

メイドに弱音を吐くような人間ではない。


もしかして、彼女は、彼女ではない?

そもそも彼女ってなんだ?


私は、彼女に何を求めているんだろう。


私に相応しい人間であること?

プライドを高く、気の強い人間であること?

優しく、笑顔を絶やさないでいること?


どうして彼女はそうでなくなってしまったのか。

あいつが、アジーンが死んだから?


アジーンが死んだらどうしていけなかったのか。

小さいときからずっと一緒にいた男だったから?

唯一気の許せる人間だったから…?



唯一?

私は何を言っているんだ。



婚約者である私を差し置いて?

5歳からずっと婚約者なのに?

僕は、婚約者なのに気が許せる相手ではない?



どうしてそこまで分かっていて何もしなかったんだろう。

婚約者だから?

王子だから?


じゃあ返せばいい。自分の国に、帰してやればいいのだ。

それか、彼女の言うように殺してしまえばいい。



私は…アジーンに嫉妬していたのは…彼女が、メリが好きだったからで。

離したく無いのなら、私はしなくてはいけないことがたくさんある。

違う、してこなくてはいけなかったことが、たくさんあったのだ。


「クラワ様!?」

自分でも驚くくらいの速さで、彼女の元に向かった。

なにも、決めていないけど。

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