その099「帰る場所」
「姉ちゃん姉ちゃん!」
今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。
「なに、仲間が出来て連帯感に意気高揚のわんこのような……って、大勢ね!?」
「久しぶりですネ、お姉サン」
「会いたかったよ姉くん」
「お姉さん、寂しかったですの……!」
「ん」
「ご無沙汰ッス!」
「ちょ、待って。部屋入りきらないから、リビング行きましょ」
と、リビングに行った先には。
「やっほー、あたしも居るよっ」
「お邪魔してます」
「ククク、我も誘うとは小粋じゃのう」
「トモさん、法城先生、部長まで!? 事前に言ってよ!?」
年上三名が待機していた。
そんなこんなで、家のリビングでプチ宴会になったぞ。
「にしても、大勢呼んだわね。どうしたの」
和やかな雰囲気の中、姉ちゃんが話しかけてきた。
「うん、こういう楽しい『輪』が、しばらくなかったからさ」
「そうなんだけど」
「クマジロー(※その017参照)は旅の途中だそうで、残念ながら呼べなかったぞ」
「呼ばなくていいわよ!?」
「あとは、やっぱり確かめたかったから」
「確かめる?」
姉ちゃんの疑問に、僕は苦笑。
アイドルになると決めてから今まで、夢中で頑張ってきたけど、
「心の帰る場所を、見失っていた気がして」
「……詩的な感慨ね」
「それだけ僕には必要なんだよ」
そう言って、僕は立ち上がる。
自然と注目が集まる中で、僕は、
「皆のことが、大好きだから!」
そのように、言うことで。
姉ちゃんが、皆が、笑顔になってくれて。
そして、
「少年。道は決まったか?」
「うん」
「ならば、行くといい」
道を示してくれた神様も、力強く笑った。
ホントに。
――この場所を、大事にしなくちゃ。
で。
皆が帰った後。
「ところで、事務所に返事はしたの?」
「明日ゴリPに返事するつもり――お?」
スマホに振動。画面にはゴリPの名前が。
「もしもしお疲れ様です。ああ、その話だけど……え?」
内容を聞いて、僕は固まった。
「どうしたの?」
通話が終わって、姉ちゃんが訊いてくるも。
僕は微妙な気分で、
「……あの話、お流れになった」
「へ?」
「逸材だから、もっとじっくり育てたいって」
「はあっ!? 何のために、私達悶々としてたの!?」
「姉ちゃん落ち着け」
「……それに、もしあなたがあっちに行くことになっても、遠征時に未来の推しを発掘する計画をしてたのに……くっ!」
「おおぅい! その理由で怒るのはどうかと思うぞ姉ちゃん!?」
大事なことを確かめつつも。
その裏は空回りだったという顛末だぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます