その074「恋愛相談」

「姉ちゃん姉ちゃ……どうしたんだ?」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶんだけど。

 姉ちゃん、スマホを手に考え中だ。

「ん……って、探求心で飼い主の肩越しにスマホをのぞき込むわんこのようにならないで」

「色々気になったからさ……って、何? 悩み相談?」

「ん、私、同級生の女子から恋愛相談をよく受けるのよね」

「恋愛経験ないのに?」

「経験がない人の話も聞いてみたいそうよ……くっ……!」

「微妙にダメージ受けてるぞ、姉ちゃん」

「い、いいのよ。学食とかカラオケとか奢ってもらったりで、見返りはあるんだからっ」

 苦々しげなドヤ顔という、珍しいものを見たぞ。

「で、今は隣のクラスの子から、『わたしの幼馴染が、先輩の男子からの好意が直球すぎて、恥ずかしさが限界になってるっぽいの。いい対策思いついたら教えて?』って相談を受けてるのよね」

「……それ、イチャついてるだけだと思うぞ」

「私もそう思うけど、相談は相談だから」

「ふーん」

 確かに、あまりないケースだ。

 ……ふむ。

「姉ちゃん」

「ん?」

「――好きだぞ」

「な……!」

「昔から好きだぞ。今も好きだぞ。これからも姉ちゃんのことが大好きだぞ」

「な、な、な……!?」

 姉ちゃん、顔を真っ赤にして、長く思考した後に、

「……あ、ありがと」

 微かな声音で、言ってきた。

「うん。今の姉ちゃんの反応を、そのまま答えにしたらどう?」

「! あ、あなた、私を弄んだわね!?」

「え? 僕、姉ちゃんへの気持ちを直球で伝えただけだぞ?」

「――――」

 またも姉ちゃんは真っ赤になるも、少し苦笑い。

「そういう打算なしでやってるところ、ホント末恐ろしいわね」

「?」



 で、翌日。

「上手くいったらしいわ。素直にお礼を伝えたら、向こうがキュン死して攻勢が弱まったって」

「キュン死って……いいのか、それで」

 まあ、解決したなら、よかったんだろうけど。



 更に翌日。

「向こうの攻勢が復活したわ。一度お礼を言われてから、何度も言われたくなったみたい」

「……すごい欲望だぞ」

「で、その娘もその娘で、どんな言葉でキュン死させて攻勢を弱めるか、これから考えるって」

「それ、結局イチャ付いてるだけだぞ!?」

「そうよね? そう思うわよね?」

 姉ちゃん、スマホを操作し終えて、窓を開けて、外に向かって、


「やってられるか――――っ!?」


「姉ちゃんそれ近所迷惑だからっ!」

「あなたもやるのよっ!」

「僕まで巻き込まないでっ!?」

 この後、滅茶苦茶制止したぞ。

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