その070「弱点」

「姉ちゃん姉ちゃんっ!」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「どうしたの。お手に対してわんこパンチで返してくる勢いのわんこみたいよ」

「さっきお父さんに、肩揉みが上手いって誉められたぞっ」

「ん、そう言えば、最近よく頼られてるわね」

「つーことで、姉ちゃんの肩も揉んでやるぞっ」

「私はいいわよ。そこまで肩凝ってないし」

「肩が凝ってない…………あっ」

「待ちなさい。今、何を考えたの!?」

「そう言う反応するってことは、自覚あるってことでしょ」

「ぐっ……ああ、凝ってるわよ。凝ってるから肩揉みなさい。さあ!」

「お、おう……」

 結局、姉ちゃんの肩を揉むことになったぞ。



「ん……確かに、上手ね」

「お父さんに言われているうちに、コツが掴めたんだぞ」

 姉ちゃんの肩はすごく細くて、力を入れると壊れちゃいそうだから、なんだか慎重になっちゃう。

 しかも、

「んっ、ん……あふ……ん」

 なんだか、揉む度に漏れる声が色っぽいから、いろいろ困るぞ。

 ちょっとドキドキしたけど、集中力は切らさずに。

「終わったぞ」

「んー、いい感じね、ありがとう」

 姉ちゃん、とっても快適そう。

「ただ、コツをつかんだってだけで、まだまだね」

「む、姉ちゃん、どういうこと?」

「お手本見せてあげる」

 そう言って、今度は姉ちゃんが僕の後ろに回って、肩をつかむんだけど、

「お……お、おおぅ」

 一押しされただけで、上手だとわかった。

 力はそこまでないのに、なんだろう、ツボがわかっているというか。

「昔は、私がお父さんに任されてたんだから、当然でしょ」

「さ、流石だぞ……」

「他にやるところ、ない?」

「ん、特には――」

 と、答えかけたところで、


「ひんっ……!」


 腕の付け根を押されて、変な声が出てしまった。

「え……なに、今の可愛い反応」

「な、よ、よくわからな……んっ……!」

「うそ、なにこれ」

 姉ちゃん、楽しそう。

 ――嫌な予感。

「っ……ね、姉ちゃん、ちょ……」

「ふ……これは、意外な弱点ね」

「や、やめて、これ以上はいけないっ」

「だーめ」

 姉ちゃん、菩薩のような笑顔で、


「大丈夫。私が昔から培ってきた技術と――普段、トモさんからスキンシップされる時の手腕の模倣を合わせれば」


「一番ダメなやつだぞっ!?」

 僕は急いで姉ちゃんから離れようとするも、姉ちゃんに腕を掴まれているだけで……力が、抜けて……いく……。

「知らなかったの? お姉ちゃんからは、逃げられない」

「あ、あ、ひ、ヒンッ――――!?」

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