その068「飯テロ」

「……姉ちゃん姉ちゃん」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「どうしたのよ、目の前で余所の子が豪華な食事に舌鼓を打っているのを、恨めしそうに見ているわんこみたいになってるわよ」

「概ね間違ってない例えだぞ」

「え?」

 そういって、僕はスマホを操作して、画面を姉ちゃんに見せる。

「……なに、このSNS画面上で載っている豪華な飯テロの数々」

「なんだか今日という日に限って、僕のクラスの皆が皆、いい食事を味わってるみたいだぞ……」

「全部が全部で美味しそうね。お寿司だったり、ステーキだったり、オムライスだったり」

「しかも、グレくんはこれだよ」

「グレくんって、あの宇宙の……って、穴の開いた牛の丸焼きが皿に丸ごと乗せられてる!?」

「王子はこれだし」

「女の子を侍らせながらシャンパンを楽しんでる!? あ、ノンアルコールって、ラベルにあるわね……」

「ヤッくんもすごいぞ」

「ハートマーク付きのキャラデコケーキ!? しかも、台所の状況からしてお手製!?」

「皆が皆で、豪華で楽しそうで羨ましいぞ」

「一部、脱線してるのがあったけど……まあ、そうかも知れないわね」

 やれやれと、姉ちゃんは苦笑して、

「しょうがないわね。今日は私が、あなたが好きなメニューを作ってあげるから、元気出しなさい。お母さんにもそのように伝えるから」

「え、いいのか? じゃあ、姉ちゃん特製のハンバーグをリクエストだぞっ」

「はいはい。まったく、そういうところは変わらないわね」



 で、夕食の席にて。

「姉ちゃんの料理の画像を、SNSにあげてみるっ」

「こらこら、豪華さでは遥かに劣るからやめときなさい」

 スマホのカメラで撮って、画像をあげてみると。


『お姉さんの、手作り……!?』

『ワンワン……少し羨ましすぎないかい?』

『おのれ』

『なんという、まったくもってなんという』

『食べたい』

『画像だけでも美味い』

『圧倒的優勝…っ!』

『非の打ち所がないどころか、こちらに非があるレベルで完璧』


「リプライでものすごく絶賛されてる!?」

「姉ちゃん、やっぱ僕のクラスで大人気だよなー」

「ホント、あなたのクラスは一体どういうことなの……」

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