その055「コラボレーション」


「姉ちゃん姉ちゃ……ナンダコレ」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶんだけど。

 姉ちゃんの机は、チョコスナックの箱とキーホルダーでいっぱいになってた。

「なに目前でハンドクラップをされて硬直するわんこみたいになってるのよ」

「いや、姉ちゃん、この大量のチョコスナックは一体?」

「ふっふっふ、よく聞いてくれたわ! デルタ☆アクセルと大手のチョコレートメーカーがコラボしたの! 期間限定で、一箱ごとにメンバーのミニキャラキーホルダーがランダムで付いてくるのよ! すごいでしょ!?」

「お、おう……」

 キラキラした眼の姉ちゃんはともかく。

 確かに、キーホルダーのクオリティは高いぞ。一つ欲しくなっちゃうくらいだ。

「ただ、メンバー一人三種の全九種だから、結構ダブっちゃうのが多いのよね……」

「もしかして姉ちゃん、コンプリートするつもり?」

「当然でしょ。これは私がこの世に生まれた時に与えられた使命、大魔王を倒す勇者の意志より重いものよ?」

「言ってることの意味がわからないぞ……っていうか、チョコスナックはどうするの」

「もちろん、全部食べるわよ。このチョコスナックまでもがデルタ☆アクセルの一部なんだから。……あれ? このチョコがデルタの一部で、それを私が食べるとしたら、実質私は――」

「姉ちゃん落ち着け」

 とまあ、その時は、姉ちゃんのいつもの病気かと思ってスルーしたんだけど。


 一週間後。

「……姉ちゃん、太ってきてない?」

「うっ……」

 華奢だった姉ちゃんの外見が、どう見てもぷっくりしていた。

「あと一種、あと一種でコンプリートなのよ!?」

「いいわけはイイから、ほら、体重計」

 結果。

「二キロ増えてるわ……!」

「ほら、言わんこっちゃない。……残り一種ってこれでしょ?」

「何故あなたがそれを!?」

「今日、学校で友達に貰ってきたんだよ。ダブったからって」

「でも、これは自分で当ててこそ……!」

「これ以上何キロ太るつもり?」

「…………くっ、仕方ない。好意に甘えるとするわ」

「体重二キロ減らしてからね?」

「……はい」


 で、二週間ほどかけて、姉ちゃんようやく体重を元に戻したんだけど。

「聞いて聞いて! デルタ☆アクセル、今度はうどんチェーン店とコラボするみたいよ!?」

「姉ちゃんいい加減にしようぜ!?」

 しっかりストッパーをかけないといけないみたいだぞ……。

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