その049「泉の精」


「姉ちゃん姉ちゃんっ!」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「なによ、ドッグランの広場で全力競争するわんこの如く……って、きゃあっ!?」

「姉ちゃん!?」

 姉ちゃんが足を滑らせて、泉に落ちた!?

「た、大変だ、助けないと……ん?」

 突然、姉ちゃんが落ちた泉の中から、頭の上に黄色い輪っか、背中には羽が生えた、白いワンピース姿のいいんちょが現れた。

「え……な、なにやってんの、いいんちょ?」

「いいんちょではありませんわ。今日は泉の精ですの」

「ええぇぇ……?」

「あなたが落としたのは、ボンキュッボンお姉さんですの? 長身脚線美のお姉さんですの?」

 と、泉の中からダイナマイト巨乳な姉ちゃんとスラッと長身の姉ちゃんが現れた!?

 いきなりの展開だけど、何となく選ばないといけないと雰囲気だぞ……って、選ぶと言っても、

「どっちも違うぞ。落ちたのは、貧乳でチンクシャで平均よりちょっと脚の短い姉ちゃんだぞ」

『あなた好き勝手言うわねっ!?』

 泉の中から何か聞こえた気がするぞ。

「おお、あなたは正直者ですわ。ご褒美にボンキュッボンお姉さんと長身脚線美のお姉さんを差し上げます」

「あ、いや、いいんちょ、そうじゃなくて……こ、これは……かつて味わったことのない、圧倒的ボリューム感……!」

「そして、わたくしは本物のお姉さんを……ふふ、うふふふふふふふふふふふふふふふふ」

『ヒィィィィッ!? た、た――す――け――て――っ!?』

 再度、泉の中から悲鳴らしきものが聞こえてきたけど、取り囲まれた圧倒的ボリューム感を前に、僕の意識は遠くなっていくしかなかった。

 ………………。

 …………。

 ……。

 


「――っていう夢を見たんだけど、姉ちゃん的にどうよ?」

「いろいろツッコミが追いつかない上に、怖すぎるわっ!?」

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