その046「雑貨屋」


「姉ちゃん姉ちゃん」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「どうしたの。雑多な玩具を前にして目移りするわんこみたいになってるわよ」

「うーん」

 暇だったので、姉ちゃんの買い物に付き合ったんだけど。

 姉ちゃんが立ち寄ったのは、アクセサリーや小物、手帳や鉛筆の文房具など、いろいろな物が置かれている、いわば雑貨屋というやつだ。

 最近、近くの商店街でオープンした店だぞっ。

「僕、こういう店はあまり来ないんだけど、ここまで並んでると、主に何を売ってる店なんだろうなって」

「ふ、甘いわね」

「甘いって何が?」

「こういう店はね、商品の並びや店内の雰囲気を楽しむものなのよっ」

「ふーん。そのドヤ顔の説明、誰の受け売り?」

「私のともだ……じゃない、う、受け売りとかそんなのじゃないわっ。私の経験から得た知識よっ!」

「姉ちゃん、すごいねー」

「そういう淡泊な褒め言葉は逆に傷つくわよ!?」

 涙目な姉ちゃんはともかく。

 いろんな物を買ってもいいし、見るだけでもいいしで、そんな気軽さがいいのかもしれない。

「お、ライトセ●バーだ」

「しっかりと光る玩具ね」

「惑星を形取ったクッションだ」

「太陽系全種揃ってる上に、結構凝った作りね。しかも太陽はジャンボサイズだわ」

「ミステリーサークルの風景写真集だ」

「……誰が買うのよ、これ」

「お腹に穴が空いている牛の剥製だ」

「でかい!? しかも、グロい!?」

「未確認飛行物体型のスポットライトだ」

「これスポットライトなの!? ……って、なんだか、真下に立った客が吸い込まれてるんだけど!? ナニコレ!?」

「さすが雑貨屋、いろんな物揃ってるな。雰囲気を楽しめるぞ」

「完全に雰囲気を楽しむ範疇を越えてるんだけど!? ……あ」

「ん? どうした姉ちゃん……お」

 姉ちゃんの視線の先で。


 ――僕のクラスの友達がレジをしていて、そのお父さんとお母さんがお店の品物のチェックをしていた。


「宇宙の人のお店だったの!?」

「おお、農業を手伝う他にも、お店経営も始めたのか」

「いろいろ突っ込みたいんだけどっ!?」

「あ、こっちに気付いた。……おじさんがスポットライトを勧めてきてるぞ。どうする姉ちゃん?」

「絶対、買わないわよっ!?」

「しかも、このスポットライト移動式なんだって。ハイテクだな!」

「それ、狙った獲物を逃さないやつ――っ!? あ……こ、こっち来ないで、来ないでーっ!?」


 姉ちゃん、僕の友達の家族一同に気に入られたみたいだぞっ。

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