その040「眼鏡」


「姉ちゃん姉ちゃんっ!」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「なによ、見えないものを見ようとして目を見開くわんこの如く……って、なんでお母さんの老眼鏡持ってるのよ」

「付けてみたくなったからだぞっ」

 装着。

「似合うか、姉ちゃん?」

「……ん、まあ、眼鏡を付けたバージョンもなかなか……」

「うーん、でも、視界が結構変な感じになるな」

「そりゃそうよ。あなた視力バカみたいに良いんだから」

「お、良いことを思いついた。眼鏡を外してこうやったら……おお、いろいろ拡大できるぞっ! 拡大拡大っ!」

「こらこら。遊んでないで、早く返してきなさい」

「姉ちゃんの背丈も、拡大拡大……で、できない」

「いきなりテンションを下げて悲しいこと言うなっ!?」

「ごめん、姉ちゃん……大きく、できなかった……」

「なんでそんなに申し訳なさそうなのよっ!?」

「縮小は簡単なのになー。ほら、縮小縮小。小さなレンズに収まるミニ姉ちゃん」

「いい加減ぶっ飛ばすわよっ!?」

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