その037「友達4」

「姉ちゃん姉ちゃんっ!」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「これまた、スリルのあまりぞくぞくするわんこみたいに呼んでくるわね。どうしたの」

「また友達が出来たっ!」

「これ以上、どんな人種が……!?」

 姉ちゃん、なんで恐る恐るの状態なんだ?

「おかしいなー。みんな普通の子なのになー」

「どの定義でそんな……って、あ、今回は本当に普通の女の子ね。同級生?」

「学級委員長だぞっ」

「へえ……ん? よく見るとこの娘、少し眼の色が淀んでいるような……?」

「あ、動画メッセージ撮ってるから、伝えてくれって言ってたんだった」

「?」

 スマホでファイルを選んで、再生開始!


『お初にお目にかかります、お姉さん』

「……あ、これはどうもご丁寧に。弟がお世話になってます」

『先日、弟さんと共に町を歩くお姉さんをお見かけしまして……わたくし、是非、お近づきになりたいと思いましたの』

「なんだか……古風な言葉遣いの子ね」

『まるで、何もかもを貫かれる気分でしたわ。なんと可愛らしい御方なのでしょう、と』

「は、はあ……」

『後日、そちらにお伺いさせていただく際には、お姉さんと……あら、いやですわ、わたくしったら、はしたない』

「え、ちょ、どうするつもり!?」

『そんなこと、わたくしの口からはとても……』

「動画がレスポンスを返してきた!?』

『ふふふ、狼狽えているお姉さんも可愛らしい……!』

「これ録画のはずよね!?」

『ですのでお姉さん。必ず、必ず会いに行かせていただきますっ! ――どんな手を使ってでも』

「どんな手って何!?」

『そういえば……お姉さん、居るのですよね?』

「ッ……!? な、なにこれ……スマホの枠に、手……!?」

『どこにいても逃しませんわよ、お姉さん……お姉さん、お姉さん』

「うそ、な、なんか、出てきてるんだけど!? ちょ、待て、待って!?」

『お姉さんお姉さんお姉さんお姉さんお姉さんお姉さんお姉さんお姉さんお姉さんお姉さんお姉さん』

「ヒィィィッ!?」


 動画終了。

「……ねえ」

「どうした姉ちゃん?」

「今、変じゃなかった? 明らかに画面枠からお友達が飛び出てきそうだったわよ?」

「いやー、最近の3D映像の技術ってすごいよなー」

「3Dで済まされるレベルなのこれ!?」

「でも、僕のスマホ、3D機能搭載してなかったんだけどなー……まあいいやっ!」

「まあいいやで済ませないでくれる!?」

「つーことで、今度連れてくるなっ!」

「ノーサンキューよ!?」

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