その035「道案内」
「姉ちゃん姉ちゃん」
商店街での買い物中、今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。
「ハイソな家の庭に優雅に佇むセレブわんこに見惚れるわんこみたいになってるけど、まあ、何が言いたいのかはわかるわよ」
「うん、すんごい美人さんが居るよね。外国の人」
僕達の行く先に金髪で背が高くておっぱいの大きい女の人が、地図を片手にあちこちを見回している。
「……もしかしなくても、道に迷ってるっぽいわね」
「わりと田舎だからなー、ここ……あ、こっちに向かってくるぞ」
「Excuse me. Where is Higashi-Ozu high school?」
おお、おっとりとした口調だけど、本格的な英語だぞ!? でも、何言ってるかわからないぞ!?
「Ah..Please wait..wait..」
と思ってたら、姉ちゃんがスマホ片手に、片言だけど応対してるぞ!?
「Please come with me. I will show you around.」
「All right! Thank you!!」
しかも、その後もしっかり会話してるぞ!? 女の人、嬉しそうだぞ!?
「ウチの高校に用があるみたいだから、ちょっと寄り道になるけど、いい?」
「お、おう……」
十分ほど歩いて、姉ちゃんの通う高校まで女の人を案内して、
「アリガトゴザイマス!」
最後は笑顔で日本語のお礼を言われて、女の人と別れた。
「……姉ちゃん、すごいぞ!? ホントに、言ってることわかったのか?」
「なんとなくよ。あの女の人も、私達向けに簡単に言ったんでしょうし」
「うはー、姉ちゃん、カッコいいっ!」
「そこまで、い、言われて、も……う……」
と、今までクールを装ってた姉ちゃんだけど、
「こ、ここまで上手く行くとは思わなかったわ……ほ、本当に、本当に偶然だったのよ……い、勢いで、あそこまで通じちゃうなんて……」
「……ね、姉ちゃん?」
「間違っちゃったらどうしようって……ずっと緊張してて。き、緊張が解けたら、ち、力が抜けちゃって……あわ、わわわわわわ……っ」
「おおぅ!? 姉ちゃんが電動のオモチャみたいに振動してるぞっ!?」
「あばばばばばばばばばばばばばばばばば」
……この後、めちゃくちゃ励ましたぞ。
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