その034「勉強」

「姉ちゃん姉ちゃん……ふぁ……」

 今日も今日とて、早朝から僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「あら、寝不足で長い欠伸をするわんこみたいね。おはよう」

「うん、おはよ……姉ちゃんは、また朝から勉強?」

「その方が捗るからね。今日は小テストもあることだし」

 姉ちゃんは、いつも夜早くに寝て、それから朝早くに起きて勉強している。

 それが合っているためか、成績は学年でも上位の方なんだって。

「でも、宿題とか朝にやってると、間に合わなくならない?」

「宿題は夕方の早いうちに終わらせてるわ。余裕は持っておきたいもの」

「おー……姉ちゃん、すごいんだな」

「ふふ、ありがと」

「でも、中学一、二年生くらいの時の姉ちゃん、いつも宿題やテスト勉強に余裕がないイメージだったよなぁ」

「それは昔の思い出よ」

「だから僕、去年こっそりタブレットで応援用の文を用意してたんだよ。『テストまで、残り二時間を切りました。まだ足掻けます』って」

「そういう焦りを煽る文章やめてっ!?」

「『もう後がありません』」

「プレッシャーまで与えないでっ!? そこは捻らず普通の応援で良いと思わない?」

「『がんばれ☆がんばれ』」

「それもそれで別の意味で聞こえて嫌よっ!? ……って、もうこんな時間!? 勉強時間、なくなっちゃったじゃない!」

「『小テストまで、残り二時間を切りました。……努力が実ると、いいですね?』」

「あんたが邪魔したんでしょ!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る