今日のわんこ弟

その０３２「しりとり」

「姉ちゃん姉ちゃんっ！」

　今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「溢れる運動力を抑えきれずに電柱にぶつかるわんこみたいだけど、なに？」

「しりとりしようぜっ」

「……これまた、原始的な遊びね。でも、私もちょうど宿題終わって暇だから、付き合ってあげる」

「じゃあ、姉ちゃんからっ」

「いいわよ。じゃあ、しりとり」

「りんご！」

「ゴリラ」

「ラブホテル！」

「ぶっ……!?」

　姉ちゃん、思わず吹き出した。

「な、な、ど、どこでそんな言葉覚えたのっ!?」

「なんだか、本に載ってた。ホテルってお泊まりするところだよな？　でも、なんでラブって付いてんだ？」

「ぬぅ……ま、ま、まだ、わからないでいいわ。とりあえず『る』ね……ルーペ」

「ペッティ●グ！」

「なっ……だ、だ、だ、だから、どこでそんな言葉をっ!?」

「え？　ペットと仲良くするときに使う言葉って聞いたけど……もしかして、姉ちゃんは本当の意味を知ってるのか？　あとで聞かせて？」

「っ……な……わ、私も、知らないわ、よ……」

「ゑー、なーんだ。まあいいや、姉ちゃん、『ぐ』」

「いつまで続くの、これ……ぐ……群馬」

「まだまだ見せます巨乳未亡人の絶頂ジハード！」

「――――っ!?」

　あれ、姉ちゃん真っ赤になりながら仰け反ってしまったぞ。

「『ど』……ど、どうしていきなり、そんな、破廉恥な、え、え、ＡＶのタイトルみたいなワードが出てくるのよ!?　誰があなたにそんな言葉吹き込んだのっ!?　もしかして、あの、魚屋のおじさん!?」

「あ、『ん』だ。姉ちゃんの負けー」

「もう、果てしなくどうでもいいわよっ!?」

　ちなみに情報の出所は、姉ちゃんの言うとおり、商店街の魚屋のおじさんが大事そうに持ってたＤＶＤだぞっ。