その031「お腹」

「姉ちゃん姉ちゃ……って、どうした姉ちゃんっ!?」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぼうとして、ビックリした。

 姉ちゃんが、お腹を押さえて、うずくまっていたからだ。

「お腹痛いのか? 大丈夫か? 病院行くか?」

「いや……そんな、心配のあまり、飼い主の周囲をぐるぐるするわんこみたいにしなくても、大丈夫よ……」

「でも、姉ちゃん、尋常じゃない様子だぞっ!?」

「えっと、その……」

「何でも言ってくれっ! 僕の出来ることなら協力するからっ!」

「で、でも……」

「姉ちゃんっ!」

「い、い、言うわよ……言うから、そんなに切羽詰まりながら、顔近づけてこないで」

 わかってくれたようだ。

 姉ちゃん、僕に向き直って、何故か顔を赤くして深刻そうに言った。


「最近ちょっと食べ過ぎだったから、お腹引っ込めるために運動してたんだけど……ちょっと、腹筋がつっちゃって……」


「……………………」

「真顔で無言にならないでっ!?」

「アッハイ」

「淡泊に返事しないでっ!?」

「……なるほど」

「あ、ちょ、淡々とお腹を突っつかないでっ!?」

「辛い分だけ、綺麗になれるからねー」

「冷たく去っていかないでっ!? わかったわよ! 謝るからっ! 心配させてごめんなさいっ! ごめんなさいってば――っ!?」

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