その025「テレビ」


「姉ちゃん姉ちゃんっ!」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「散歩から帰って家族にただいまを告げるわんこみたいにやってくるのは良いけど、あんまりうるさくしないでね」

「テレビのチャンネル、変えていいか!? 見たいのがあるんだっ」

「ダーメ。今、私が見てるんだから」

「ゑー。つーか姉ちゃん、高校生にもなって動物番組って……」

「好きだからいいのよ。ほら、可愛いでしょ?」

 確かに僕も動物は好きだけど、実際に見て触れる方がいいから、テレビで見てもピンと来ない。

 ……って、やばっ!? もうすぐ見たい番組始まっちゃうよっ!

「姉ちゃん、チャンネル代わってよ~」

「ダメだってば。今、私の好きな小型犬の特集なんだから……!」

「ぬぅ……!」

「あ、こら、テレビの前に立たないで。テレビがよく見え――」


「――姉ちゃん、お願い。テレビ、見せて」

『クゥーン クゥーン……』


「――――――――っ!?」

 あれ、姉ちゃんどうしたんだ? 思いっきり仰け反ってるぞ?

「…………わ、わかったわよ、好きにしなさい」

「お、いいの? やったーっ!」

 なんだかよくわからないけど、チャンネル権をゲットしたぞっ!

「でも、姉ちゃん、どうして見せてくれる気になったんだ?」

「……ずるいわよ。こんなの、耐えられるはずがないじゃない……」

「???」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る