その021「本2」


「姉ちゃん姉ちゃんっ!」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「まるで探求心で穴を掘るわんこみたいな勢いなのは良いけど、なにかあったの?」

「本を拾った!」

「……もしかして、またエロ本? 今度はガン見しないわよ」

「誰でも出来る即日バストアップだっt「詳しくっ!」

 この瞬間の姉ちゃん、間違いなく反応速度が音速を超えてたぞ。

「姉ちゃん、すごい食いつきようだな」

「うるさいわよ。そんなことよりも、詳細を! 早く! 早く!」

「えーと、まずお金を用意します」

「ふむ」

「そして、こちらの美容整形外科に行きます」

「豊胸でしょそれ!?」

「つきましては、我がクリニックにお越しください。お電話番号は――」

「って、単なる広告誌――っ!?」

「だから言ったじゃん、本だって」

「わかってるわよ!? もう! もう! こうなったら、ホントに電話かけてやるっ!」

「ね、姉ちゃん、落ち着いて。深呼吸しよう。ほら、息を吸って……そうそう、胸を膨らますように……」

「どうやっても膨らまないのよケンカ売ってんの!?」

「ええええっ!? それで怒られるのって、なんだか納得できないんだけどっ!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る