その019「手品」


「姉ちゃん姉ちゃんっ!」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「真新しい物を見て興奮に息を弾ませるわんこみたいに呼んでくるけど、何の用?」

「手品を覚えた! 今度みんなの前で披露するから、ちょっと見てくれっ!」

「ほうほう、どんな物を見せてくれるのかしら?」

 結構、興味津々だな姉ちゃん。頑張るぞっ。

「では、ここに種も仕掛けもない帽子があります」

「ん、生き物が飛び出すもの系統ね。しかも何故かハットではなくキャップなのがシュールだわ」

「で、帽子にいったんハンカチで蓋をして、それから魔法をかけて……ほいっ!」

「ハト……ではない、これは、亀? 何故に亀?」

「そんでもって、ほいっ!」

「え、ちょ、亀が宙を浮き出した!?」

「ガー●ラー!」

「ガメ●って……ん? 首と手足を引っ込めて、甲良から火を噴いて……回転して……えっ、えーっ!?」

「あばよ、●メラ!」

 そうしてガ●ラは、窓から外に飛び出して、お空の彼方に消えていったのさ。

 ふー、上手くいったようだぞ。初成功だっ!

「……ナンダコレ」

「どうだった、姉ちゃん?」

「いろいろツッコミが追いつかないわ」

「姉ちゃんも出来るようになるぞ」

「どうやってよ!?」

「こう、燃焼系燃焼系~って一回転する訓練をすれば」

「出来ないわよっ!? と言うか、その訓練が出来たとしても、火は噴けないわよ!?」

「え? 燃焼するだけに火力が溜まるはずなんだけど」

「上手いこと言ったつもりか!? あと、そもそも人間に火力なんてものは溜まらないからね!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る