その018「風邪」


「姉ちゃん姉ちゃ……う、ゲホッゲホ」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「ホント、喉に物を詰まらせたわんこみたいね。実際、風邪で喉を痛めているわけだけど」

「うーん、昨日の学校での、エンジェリック・ウォーターごっこが、こんな結果を生むとは……ゴホッ、エホンッ」

「……内容がすごく気になるけど、あえてつっこまないわよ。ほら、ちゃんと寝てなさい」

 休日なのに、姉ちゃん、僕を看病してくれてる。うれしい。

 ……あ、そういえば、この前、友達が言っていたことを思い出した。

「姉ちゃん」

「なーに」

「風邪って人にうつせば治るって聴いたけど、ホントかな……ゴホッ」

「……なんだか不穏なことを言い出してるわね。だいいち、どうやって移す気だ」

「うーん、ちゅーするとか?」

「えっ!? ……は?」

「姉ちゃん、ちょっと試してみない?」

「いや、ちょ、待って! いいの、そんなことでっ!?」

「大丈夫……ゴホッ、姉ちゃんとならノーカンだから」

「それはそれで心外……って言うのも変だけど、傷つくわよっ!?」

「じゃ、やろうか」

「え、ちょ、だめ、まだ心の準備が……って、なんで風邪引いてんのに、こんなに力強いのよ……!?」

「姉ちゃん……」

「あ……いや……その……~~~~~……もう……だめ……」

 目をぎゅっと瞑る姉ちゃんに、僕の顔が触れる、寸前、



「う……ふぇっっぷしゅっ!」



 僕の盛大なくしゃみが炸裂した。

「…………」

「…………」

 oh...姉ちゃん、顔が液体まみれだぞ……。

「…………何か、言うこと、あるんじゃない?」

 すんごい怖いぞっ!? 何かって、なんて言えばいいんだろう!?

「ないぞっ!」

「ないのかよっ!?」


 結果、張り倒されてしまったぞ……。

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