その014「コーヒー」


「姉ちゃん姉ちゃん」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「なんだか、慣れないものを食べて顔をしかめるわんこみたいよ。……まあ、初めてのコーヒーだから、気持ちは分かるけど」

「すごい苦い」

 背伸び心が働いて、初めてコーヒーを飲んだはいいけど、僕にはちょっと合わなかったみたい。

「ふふ、まだまだ味覚がお子様ね。ほら、貸しなさい。砂糖とミルク、足してあげるわ」

「十個!」

「それは入れすぎよ」

「んで、ミルクたっぷり!」

「もはやコーヒーではなくカフェオレね」

「ふ、僕……いや、ここはオレだからいいんだよ。まさにオレカフェ!」

「上手くないからね」

「姉ちゃんのもオレカフェにしてやる! そしてオレのものだ!」

「やめなさい」

「姉ちゃんは、オレのものだっ!」

「……………………」

「ん? なんで姉ちゃん、顔真っ赤になってんだ……うわっ、なんか姉ちゃんの持ってるコーヒーが淹れたときより湯気立ってる!? 一体何がっ!?」

「……うん、まあ、やめなさい。いろいろ」

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