その015「にらめっこ」


「姉ちゃん姉ちゃんっ!」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「なーに、まるで、遊具をくわえてあからさまに遊んでオーラを醸し出すわんこみたいに」

「にらめっこしようぜ!」

「これまた古典的な遊びね。……でも、懐かしいから、付き合ってあげるわ」

 なんのかんの言いながら、付き合ってくれる姉ちゃんだ。

「よっしゃ。にらめっこしましょ、あっぷっぷ」

 合図と共に、姉ちゃんは変顔をしてきたけど。

 対する僕は、

「……なんで真顔?」

「姉ちゃん、立ち合い中に、口を挟んじゃダメだぞ」

「う……わ、わかったわよ。仕切り直しね」

 気を取り直して、もう一度。

「にらめっこしましょ、あっぷっぷ」

 再度、違うパターンで変顔をする姉ちゃん。

 対して、僕はもう一度、先程と同じでチャレンジ!

「…………」

「…………」

「…………」

「…………う」

「…………」

「…………あ、の……」

「……………………」

「……~~~~~~」

 三十秒ほどで、姉ちゃんが、耐えかねたように目を逸らした。

 我が家のルールでは、笑う他にも顔を背けたりすると負けなのだっ。

「はい、僕の勝ちー」

「ひ、卑怯よ……そ、そんな、熱っぽく見つめてくる上に、うっすらと涙まで浮かべてみせるなんて……こ、こっちが恥ずかしくなるわ」

 姉ちゃん、何故か、顔どころか耳まで赤い。

「このルールだと、こうすれば女子には大体勝てるって友達が言ってたけど、なんでだろなー」

「なんというか、末恐ろしい友達ね。あなたの愛らしい犬っぽさを最大に引き出させるとは」

「ところで姉ちゃん、なんで恥ずかしかったんだ?」

「……あなたもあなたで、打算なしでやってるから末恐ろしいわ」

「?」

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