その010「子守歌」


「姉ちゃん姉ちゃんっ!」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「……ごめん、今ちょっと眠いから、そんな遊んでほしいがための構ってオーラ出してるわんこみたいに求めてきても無理よ……」

「おお。もしかしてムッツリクイーンご贔屓の深夜番組を見てたとか?」

「その呼び名はヤメテ!? あと、深夜番組なんて見てない……んぬぅ……」

 今日の姉ちゃん、ホントに勢いが途中で切れてしまうな。ここは一つ。

「じゃあ、姉ちゃんのために子守歌を歌うぞ!」

「要らないお世話よ……」

「ねーむれーねーむれー」

「え、なに、この無駄に上手なボーイソプラノ……」

「ねーむれーねーむれー」

「……あ、でも、これはひょっとしたら上手く眠れるかも……」

「ねーむれー、傷つき疲れ果てた戦士よ、今はすべて忘れてねーむれー」

「なに……この、スーパーロボットアニメの最終回みたいな歌詞?」

「背負い続けてきた重く冷たい孤独を解き放ち、永久にねーむれー」

「それ絶対にロボが壊れたやつでしょ!? そんな眠り方嫌よ!?」

「あ、姉ちゃんが奇跡の復活をしたぞ。まさに姉ちゃんリバースエボリューション」

「勝手に新番組始めないでっ!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る