その009「神様」


「姉ちゃん姉ちゃんっ!」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「なんだか用を足してスッキリ満足そうなわんこみたいなのがムカつくわね。なによ」

「今日の帰り、神様にお願いしてきたっ!」

「神様というと……この町の、菜奈神様のこと? あんまり詳しくはないけど……何のお願いしたの?」

「姉ちゃんの身長がもう少し伸びるようにって」

「おい」

「で、それを聴いた神様は『ふむぅ、それは難しい相談じゃな』って言ってた」

「なんでよっ!? ……って、それを聴いた神様って、いったい何!?」

「ごめん、姉ちゃん、僕の欲望の力が足りなかったようだ」

「え、いや、欲望って……じゃなくて! だから、神様って実際存在するの!?」

「とても、とーっても熱心に願えば、わりと叶えてくれるし、目の前に現れてくれるよ?」

「ま、まじなの? ……今度、お参りに行ってみようかしら」

「でもやっぱり、姉ちゃんの身長は難しいみたいだよ」

「なんでよっ!?」

「要は、神様の力を越えるくらいの何かが必要ってことじゃない?」

「私の身長って、そんなに重大な難問なの!? ちょっと泣きたい気分なんだけど!?」

「『ひとまず、成長期にカルシウムばかり取っていたら骨が固まって逆に伸びなくなるから、肉と野菜と大豆なんかもバランスよく食べて、しっかりと運動したら、ちゃんと伸びるようになるぞ』というアドバイスはいただいたぞっ」

「神様なんでそんなに現実的なのっ!?」

「あ、これ、僕へのアドバイスね」

「あんたが伸びてどうすんのよっ!?」

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