その004「プリン」


「姉ちゃん姉ちゃんっ!」

 今日も今日とて、僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「なによ、余所の家の人に警戒してキャンキャン吠えるわんこみたいよ。ご近所迷惑だからやめなさい」

「僕のプリン食べたの、姉ちゃんかっ!?」

 僕が冷蔵庫の中に大事に大事に置いてあったプリンが、いつの間にかなくなっていたのだ。

「これにはさすがの僕も『いかりしんとう』だぞ! 怒りはともかく、『しんとう』の意味はわからないけど!」

「わからないのね……。確かに昨夜、お風呂上がりにいただいたわ」

「むぅ! 姉ちゃん、自分が悪いと思ってないなっ!?」

「悪いも何も、誰のものでもないはずよ。冷蔵庫に置いてたやつなんだから」

「うぬぅ……じゃあ、ちゃんと名前書いておけってことか?」

「物わかりが良くてよろしい」

「じゃあ、姉ちゃんのものにもわかるように書いておくなっ! ミニカップって!」

「……物わかりが良いようで、すんごい根に持ってるわね」

「プッチンしてもプリンとしない。プリンじゃなければ……一体なんだ?」

「そろそろぶっとばすわよ?」

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