第25話
「ああ、あいつか」
「そう、そのあいつの話よ」
「どこまで……」
カーテンの隙間から入り込む光が、目に刺さるように眩しく感じられた。その微かな光だけでは、今が何時くらいになっているのかを把握できない。カーテンを開ければ、真っ直ぐで素直な昼の光が入ってくる可能性もあるし、まだ柔らかく柔軟な朝の光が入ってくる可能性だってあった。いずれにせよ、僕には今がそのどちらであるのかが分からないままだった。
「どこまで……話したんだっけ?」
「その人が……あいつって人がお化けだったってところまで」
「ああ……」僕はまたあの時屋上で見たあいつの姿を思い浮かべた。「……そう、お化けみたいなやつだったんだよ」
「なんでなの?」
「なんで?」
「なんでその人がお化けだってあなたには分かったの?」
「いや別に物質的な理由がある訳じゃないんだよ。ただあいつが昔そこから飛び降りたって話を聞いただけで、あ、この人はもう既に死んでしまった人なんだって勝手に思い込んでいただけで……」
「じゃあ、その人が本当にお化けかどうかなんて分からないじゃない」
「その通りだよ」
「他には?他に何かその人がお化けである理由はないの?」
「うん……。別にないな」
「そうなんだ……」
彼女は呆れたように大きく一つ溜め息をついた。
■古びた町の本屋さん
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