第23話

「僕はもう戻るから」

「はいはい」

その声が少しだけ寂しそうに聞こえたのは、僕の勘違いかもしれない。あいつは青い空を遠く眺め、何かを思っているように見えた。

「あ、それ」

「え?」

「それだよ、それ」

あいつは僕が脇に抱えていた漫画雑誌を指さしていた。

「これ?」

「そうそう」

「これがなんだよ?」

「その人、西条凛。俺好きなんだよなー」

「ああ……そうなのか」

僕は屋上から校内へと続くドアに手を掛けたまま、簡単に反応した。あいつは俺がここに少しでも長くいるように仕向けているのだろうか。どうであれ、僕の気持ちが変わることはないのだ。

「西条凛可愛いよなー」

あいつはそう言ってから、「食べちゃいたいくらい」と言った。


■古びた町の本屋さん

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