第19話

     ***

――

「ただ知らないだけだと思ったんだよ。僕のことを知っている人だったら、きっと僕に話し掛けたりしないだろうからさ。別にそう考えれば、不思議なことでもなんでもないんだ。僕は存在を忘れていたように扱われていた訳じゃないから。授業の時はこの数式を解けとか、この英文を訳せとか指されるし、隣のやつが落とした消しゴムを拾ったりしたらありがとうって言われたりもするんだ。だけど、なぜか友達と言えるような人は誰一人いなくなってしまったんだよ。そういった必要最低限の会話以外が僕の学校生活の中にはなくなってしまった。だからあいつが屋上で話し掛けて来た時、強い違和感を感じたんだ。学校という場で、別に必要といえないような会話を誰かと交わしていることが僕にとってはおかしかった。きっと僕はそれに最初から気付いていたんだ。だけど、それに気付かない振りをしていたんだと思う。その学校という敷地の中で行われる無駄な会話を懐かしく感じて、少し嬉しくなっていたんじゃないかと思うんだ」

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