第18話
「なあ」
「何?」
あいつは僕の方を向いたまま、僕の言葉を受け止める体勢を取っていた。
「君は僕のことを知っているのか?」
「は?」
「だから、僕のことを知ってるのかって」
「この学校の生徒だろ?」
「は?そんなの当たり前だろ」
「じゃあ……昼休みに、屋上で一人漫画を読んでるこの学校の生徒だろ?」
「はあ……」
あいつがどのような会話を望んでいるのか分からなかった。
「もういいって」僕はそう言って、また視線を漫画の中に戻した。
「俺もな、この学校の生徒なんだ」
「ああ、そうか」
どうでもよかった。とにかく今、僕は後ろにいるあいつと何かしらを話しているというそれだけでよかった。
「いや違うな。元々生徒だったんだ。今は違うんだ。……いや、それも違うような気がするな」
「何言ってんだよ」
「俺な、死んだんだよ。もう何年か前になるんだけど」
「は?」
「だから、俺はこの屋上から飛び降りて死んだんだよ」
僕はまたあいつの顔を見た。あいつの目は僕の目の中に向けられていて、僕はすぐそこに、確かにあいつの実態を感じ取っているはずだった。
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