第13話
「星って……じゃあ、今は僕が来たっていいじゃないか」
「まあ、別に俺はお前をここから追い出そうとしている訳じゃないんだ」
「だってさっき、俺の場所って言っただろ?」
「ああ、言ったよ。俺の場所である事は間違いないけど、お前の場所でもあるんだろう?だったらそれでいいじゃないか」
「は?」
「だから、別にお前はここにいればいいさ。俺もここにいるけどな」
「ああ……」
議論の幅を失った。とにかく、今僕はここにいて何もしなくていいし、あいつもここにいて何もしなくていいということだけは分かった。つまりこのままでいればいいというだけで、とても単純明解だった。
「お前、何見てんだよ?」
「漫画だよ」
僕は胡座をかいた足の上に開かれている分厚い本に目を落としたまま答えた。これまでの会話の中で、一々顔を向けて答える必要などないとなんとなく感じていたからだ。
「漫画なんて面白いのかよ」
「いや……」
漫画が面白いのかどうかなんて考えた事は別にない。ただたまたま僕の生活の近くに漫画があったというそれだけの理由だった。どうせ一人の時間なのだ、出来るだけ何か意味のあったような気持ちになりたいじゃないか。
「……それに、時間を潰せるんだよ」
「それ?」
「あ、いや……」
自分の頭の中で考えていた続きから言葉を発していた。相手からしてみれば、随分と端折った会話に感じたに違いない。
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