第3話

「いや別に、深い意味なんてないよ。ただなんとなく、……そういう感じになったのよ」

「そういう感じ?」

「だから、食べちゃいたいって」

僕にはどうしても分かりそうになかった。今僕の右腕の中にいる彼女のことを僕はとても好きだけれど、だからと言って食べちゃいたいという感じにはならない。どうしたら、そういった感じになる事が出来るのか、もしそういう感じになれる事が出来るのであれば、僕はもっと彼女の意見に耳を傾けてもいいと思う。

「分からないな」

「いいよ、別に分かる必要なんてないんだから」

「でも、気になるんだ」

「気になる?」

「そういう気持ちになる君や、昔そう言っていた誰かが、なんでそう思うのか……」

彼女は少し笑った後に続けた。

「あなたはいつもそうだけど、ちょっと考え過ぎなんじゃないの?そんな細かいことを一々考えて生きてるなんて疲れない?」

「ああ、少し疲れるかもしれない。でも、この疑問を気にしながら抱えて生きているのも、それはそれでストレスになる。これはもうどうすることもできないみたい」

「厄介な性格なのね」

「性質だよ」

僕は上半身を起こしてからもう一度言った。「厄介な性質なんだ」

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