第15話
「噂どおり、ね。」
二人とも、桜邸に来るのは初めてだった。噂に通り、と言うよりも噂に勝ると言った方がいい。桜の樹の多さは二人を圧倒した。
「色々な種類の桜がありますよ。」
メイドの加奈はそう言って笑った。
「この桜は彰子婦人が?」
「ええ。お好きなんだとか。」
加奈はそう言うと含みのある目線で桜を見上げた。今は葉桜であるが、春になればそれこそ花盛りとなるだろう。それを想っての事だろうか。
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