第14話

 明日になったら。そう思う事は誰しもある。先送り、とも、言えようが、得てして人生と言うものは人間の計り知れないところで計り知れない事が起こるものだ。

「見つかった?」

早朝、というほど早くは無いが、そこそこに早い朝七時。低血圧のルナは寝床でヒナの声を聞き、ぼやけた頭で辺りを見回していた。隣のヒナのベッドは既に空で、きちんとベッドメイクされている。かなり前に起きたらしい。とはいえ、特に何かがあったわけではなく、いつもの日常だ。

 事務所の電話にヒナはフライパン片手に出ていた。朝食の目玉焼きがいい感じで焼けている。

「自分で帰ってきたんですか?…ええ、はい。分かりました。」

電話では相手が目の前に居ない所為か、ヒナははきはきと答えている。そして、ありがとうございました、と、言って受話器を置いた。その直後に、入り口の縁に縋るようにしてルナが起きてきた。

「…見つかったって…どっち?」

「ミィちゃんの方。で、加奈さんが私達が猫を見たの、知ってるじゃない?同じ猫か見て欲しいんだって。」

「…まぁ、自力で帰ってきたとなれば成功報酬、って訳にも行かないしね…」

「成功してないもんね。」

ヒナは苦笑いした。

「でも、見つかってよかったじゃない。」

「…うん。」

事実、生きて見つからないこともあるのだ。

「とりあえず、お約束は午後にしたから、ご飯食べて支度しよう?」

「そ、ね。」

そう言いながらずるずると床に崩れ落ちてしまったルナをヒナが慌てて起こしに行った。

 その頃、キッチンではアンティークなトースターがチン!と音を立てていた。

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