第9話

 双子は一人の若いシスターに案内されて修道院の中の礼拝堂に入った。礼拝堂には真っ白いマリア像が祀られていた。

 二人はその美しさに見とれた。その温かい眼差しは全ての人罪を告白させ、更にそれを洗い流すかに思えた。柔らかく開かれた両手は全ての人に母親の腕を思い出させるだろう。

 そう。

 自分が喩え、どんな存在であってもただ、深い愛情を持って抱きしめてくれる母の腕を。

「聖母、マリア…」

二人は同時にそう口にした。まさに聖母の名に相応しいマリア像だった。

「私も、このマリア様、大好きなんです。」

双子よりも少しばかり年は下だろうか。若いシスターはうっとりとマリア像に見とれていた。普段見慣れているはずのシスターですらこうなのだから、自分たちが惚れ惚れしても仕方ないのかもしれない。

「私、実の母とは生き別れているんです。だから余計にマリア様が好きなのかもしれません。」

シスターはそう言った。

「ずっとここに?」

ルナが聞くとシスターは首を横に振った。

「お恥ずかしい、話ですが…」

そう言って少し気まずそうに彼女は話し始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る