第16話 調査開始

仁と努が話をしてから、たおやかに日は流れ3日が経った

仁はごく当たり前の日常を、彼がこれまでそうしてきた日々を送っていたが、その日は有る人物と出会う約束をしていた

鹿島という男である

鹿島は、仁の死亡事件を担当した刑事であり、2日前に警察署に連絡を取り仁は役所に提出する書類に関しての事項をいくつか聞きたいので、少しお時間を頂ければありがたいのでと言うと、いつ話を聞くために来てもらっても構わないが、詳しい話をするなら明後日が良いと返答を貰った

では、明後日にお伺いすると鹿島に伝え、それから2日が経った

警察署は仁の家から車で20分程度のところにあり、朝起きてから朝食をとると黒のジャケットの上に1枚コートを羽織り素早く家を後にする


詳しい死因や、どういう状況であったのか警察では何か家族が知らないような情報を聞けるのか?と期待と不安を胸に抱き車に乗り込む

助手席に書類の詰まったカバンを置き、エンジンを掛けるとラジオがつき二昔前の流行曲のサビが車内に響く、アクセルを踏み込む。中古で買ったこの車も、もう2回の車検を終え。かかるエンジン音も彼にとっての日常である

車を走らせる道路は、空いており少し前の時間なら通勤通学の人々が多かったであろう歩道にも人の姿はない

時計を見ると8時35分、警察署の受付が9時からと聞いていたので朝一番で行くと鹿島とは約束をしていた

普段の生活ではあまり使わない道路を警察署へ向かって車を走らせる。家の近くの狭い道路から二車線の国道に入ると、急に車の台数が増える

そこから、ラジオから流れる曲が一曲終わり若手のラジオDJが最近のあった出来事を話し始めたところで、仁の車は警察署に着いた

築何十年かが過ぎたらしい、警察署は趣というよりはみすぼらしいと表現した佇まいを見せている

(少し早く着きすぎたか?)

まだ、受付時間開始までは少しの時間が有ったので駐車場に止めた車の中で時間をつぶす

駐車場では同じ様に受付まで待っている人や、警察署職員であろう人が数人右往左往する、彼らも何か理由があってここに来ているのであろう。自動車免許証の書き換えか、落とし物を受け取りに来たかそんな用事を抱えて


そう思いながら、数分何気なく社内を見渡していると

あることにふと気づく、

いつもなら何でもないと感じてしまうような些細なことではあったが、仁にはそれが奇妙なものに見えた

エンジンオイルのメーター残量が2割ほどを指している

おかしいな…確か…

先日の弟の電話越しの会話が頭をよぎる

(車の一年点検にうちの工場来たんだ)

あの時、確かに聡はそう言った。前の仁が先月に弟の自動車整備工場を訪れたと

一ケ月前に行ったと言うなら、この残量でオイル交換をしない…あり得るか?おそらく俺自身ならそうはしない

ダッシュボードから、車検証を取り出す

確かに、時期的には一年点検をしてもいい時期だ。だが、何かがおかしい

聡は何か隠してるんじゃないか

何か、俺に言えないことを

キーンコーンカーンコーン

少し離れた高校の、授業開始のチャイムがあたりに響く

9時だ、今は弟の事は置いておいてまずは鹿島から話を聞こう

そう思い仁は車から出て、警察署の入口へと向かった

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