第94話 飯飯飯飯飯メシ飯
「勇者さま、ですよね……」
ドラジェさんが、俺の目の前に居た。シアンによく似ている面影の……青い瞳で俺を見つめるドラジェさんは、否応なしに俺にシアンを思い出させた。
「ドラジェさん……シアンを失いました。すみません」
無言で首を横に振るドラジェさん。
そうだよな、妹ともう会えないのって、やっぱり辛いよな。
「いえ、シアンは居ますよ。そこに」
……え? まさか――シアンが居る?
ドラジェさんは、失礼します、といい俺の服の下にある胸元のペンダントを取り出す。白銀の光がペンダントから溢れ、光が収まったときには、シアンが目の前に立っていた。
「マスター……」
消えたときと、まったく同じままのシアン。
いつも通り顔に感情は表してないけど、感極まったのか、俺を呼んだあと、ぎゅっと抱きついてきた。
「シアンはずっと、勇者さまと一緒にいたのですよ。その柄の宝石の中にいたのです」
コクコクとシアンも頷く。ええー! ってことはアガリ屋のネギ味噌ラーメンを食ったり、母さんのカレーを食ったりしてたとこも見てたってこと? いやそれ以上に、あーんなことやこーんなことを一人でやってたときも……?
青くなる俺を見て、シアンは
「どうでもいい。とにかくカレーとラーメンを食いたい。早く」
……はい、了解しました。シアンさま。
飯飯飯飯飯メシ飯と言いまくって、口を尖らせるシアンを撫でてなだめている間、ドラジェさんが話してきた。
「魔王を消滅させなかったのが良かったんです。魔王は影。つまり我々龍とは表裏一体であり、影がなくなれば、わたしたち龍族もいなくなってしまうのです。だから、あのときのあなたの判断は正解でした」
そうなのか。
「勇者さまの、そのペンダントがあれば、いつでもここに来れますよ。またいらしてくださいね。シアンと一緒に」
「うむ。わたしもマスターの家にいく。だから今日は、カレー」
了解した。早くうちに帰ろう、シアン。
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